[未校訂](十月)
一三日 晴、昨夜四ツ半頃歟、古今稀成大地震一同肝を潰し
逃出し候事、但し下男与吉のミ茶之間椽ゟころげ落チこし
痛ミ候得共、外ニは怪我無之、○即刻御見舞として夜中ニ
西楽寺崇源寺登山、今日称名寺・円福寺・川崎本二郎其外
共御見舞登山之事
○此地震当方ゟ江戸は一入大変、浜辺は水入候、家はたお
れ通行も出来兼候程之由、此街道昨夜ゟ早打往来□□(ムシクイ)夥
敷通行、其上江戸は火事出来言語道(ママ)断之由、実ニ稀有之大
地震前代未聞、○御本丸も崩れ□(ムシクイ)諸侯御屋敷も多分崩れ
人死ニ沢山之由、痛心〳〵当山本堂始メ座敷庫裏昨年ゆか
み直し白壁等塗直し候場所不残ゆかみ、白壁ゆり落し手入
いたし候甲斐更ニ無之残念之事ニ候、○昨夜ゟ引続今朝迄
ニ小地震十二度ゆり、其度之戦々兢々胆を潰し候
一十二日 晴 〇十三日 雨 昨夜四ツ過重応江戸ゟ帰り、
江戸は千住ゟ山谷辺家并倒れ、実ニ通行も出来兼候程之
事、馬は御□(ムシ)たり共往来留、且芝山抔は山内水入其外□(ムシクイ)
深川は大水入、其外所々火事出来之由
一廿三日 晴 去ル二日夜大地震ニ付代々墓始メ担中石塔皆
々倒レ候ニ付、夫々施□(ムシ)家ゟ早々直し候様申遣ス、且代々
□(ムシクイ)倒れ候石塀□□(ムシ)両人相頼丈内中惣掛りにて今日ゟ直し
ニ取懸候事 ○新宿権蔵石塔開眼