地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（卯年出府中日記）
十月二日辰 北風有之尤風ハ凪夕刻晴
一今夜四ツ時頃大地震、人家潰れ家多く有之、怪我人・即死
人等多分有之、其外土蔵都而江戸中大痛、其上諸々出火ニ
相成
御城両本丸を始、諸大名御屋敷、市中一円大火ニ而、驚入
候、拙者共一同宿家内ハ要用之品少々持出候、立チ之儘漸
漸助命、相凌候、かしに有之小船ニ而見合居候処、嶋方御
会所ゟ宿近辺明石町は類焼相残り申候故、夜明ケ方立戻り、
宿之廻りニ而夜を明し申候
十月三日巳 凪晴
今日も地震
十月四日午 風晴
一今朝三宅嶋壬生摂津殿拙者両人ニ而御支配御役所へ御様子
伺ニ罷出、柏木総蔵殿・上村井善平殿列座、仮囲ニ而御目
ニ掛リ、夫ゟ元〆長沢兵四郎殿・津田播六殿上村井宅江相
廻リ、夫ゟ懇意之方へ夫々見舞ニ相廻リ、夕刻宿迄帰リ、
庄次郎ニ面会いたし、夫ゟ帰船、尤御支配御役所は不残皆
潰れ、御手代衆御宅長沢同様皆潰れ、外御方御居宅ハ格別
之障りも無之、仮御役所を始、御人々は御別条無之候、今
夜権左衛門船一宿
今日も地震
十月五日未 風曇
今日も時々地震
十月六日申 西風晴
今日も時々地震
十月八日戌 風曇夜中雨少々降
時々地震
十月九日亥 凪曇夜中雨
時々地震
十月十日子 凪曇
一時々夜分地震
同十一日丑 風曇
一今朝御役所江相出候処、いまた御仮宅普請中ニ而御役席無
之候ニ付直様帰宅
時々地震
同十二日寅 風晴
一時々地震
同十三日卯 風曇 時々地震
同十四日辰 風雨天 時々地震
同十五日巳 風晴 地震
十月十六日午 風晴 地震
同十七日未 風晴 地震
（中略）
此度御当地地震、市中大損ニ付、拙者共様子尋旁私用も有之
趣ニ而□（大カ）嶋新嶋村船江便船、浦賀ゟ陸通り罷越、今日出府面
会いたし、嶋之様子等相尋候処、別段相替り候義無之、地震
之差障り其外都而一統別条なき趣申候よし、同人も拙者共一
同宿ニ罷在候
同廿日戌 風晴 四ツ時地震
同廿三日丑 風晴
（中略）
一先日（カ）浦賀嶋屋源左衛門ゟ地震為御尋書状到来ニ付、右返書
今日三宅嶋与平船ニ而船主相頼ミ差出し候
同廿五日卯 南風晴 八ツ時地震
十一月三日戌 風曇
（中略）
一猪井慈眼寺拙者留守江被参、此度地震ニ而寺院破損之義ニ
付、木財（ママ）等無心一条親類之方江申遣し□（ヨゴレ）而御含被下候様頼
ミ由、市左衛門江申被置被帰候由、帰宿之処市左衛門申聞
候、尤酒并御茶壱袋持参給候