地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（御巡見様方御尋之節御答書覚）天保九年
本庄町ニ而御答
（前略）
一文化元年大地震之節町家破損御尋候ハゝ
一町家数潰百五拾弐軒 一同大破百九十軒
一土蔵潰七 一同大破三拾九
右之外細々御尋候ハゝ承り可申上旨可申上候
一濡浜永泉寺隠居所ノ儀御尋有之候ハゝ菩提所永泉寺隠
居所与斗り可申候、何年頃ゟ与御尋候ハゝ文化十二年
之頃より与（と）可申上候
門之事御尋候ハゝ此奥ニ三拾三観音石塔有之、信心之
輩寄附仕候門ニ御座候与可申上候、仏御尋候ハゝ仁王
与可申上候
一同所門前家之儀御尋候ハゝ御城下入口之事ゆへ先年町
下ゟ出張之茶屋ニ御座候与可申上候
一川原御役所御尋候ハゝ川之口出入調役所与申上、先年
無之与被仰候ハゝ川欠ニて此所江引移候様可申上候
一大渡船場・川幅・深御尋候ハゝ
五拾五間五尺余 一南端深四尺余
中程深九尺余 向端深四尺余
（後略）
塩越ゟ通筋村々ニ而御答
一御巡見使様万一御尋有之候ハゝ可申上候
御尋無之候ハゝ此方ゟ差出申上間敷候
一領内高弐万弐拾壱石余有之由、但シ余ハ何程与御尋有
之候ハゝ承り可申上哉与伺可申候
右之内三千石余毎年川欠堤堰代引方ニ罷成候由、此外
年ニ寄毛之上ニ而引方大分被下候、近年作成不宜候ニ
付御地頭様御内証難儀候得共百姓共御介抱ニ而御引方
被下御救被下候事
但シ先年ゟ引方千石余斗与御尋候ハゝ文化元年大地震
之節山崩川欠大ニ有之、千石余増ニ相成候段及承り候
一塩越本田本畑
高六百三拾六石余 五ツ六歩取
新田
高三百三拾八石余 三ツ四分八厘六毛取
（中略）
一象潟之儀御尋候ハゝ前度は南北弐拾丁余東西七丁、或
ハ八丁位の湖水ニ御座候処文化元子年大地震之節砂涌
出谷地同様之地所ニ相成候ニ付廿四五年以前より田形
畑形開発仕候得共海続湖水之場所ゆへか所々塩水涌出
候場所数多有之、未熟田不仕見取場ニ仕差置申候
一同処反別御尋有之候ハゝ田反別十六町三反八畝六歩、
畑反別三反三畝十歩与可申上候
（中略）
一文化元子年大地震ニ付、損所等御尋候ハゝ御通筋村々
左之通
一番所并役所潰 一潰家三百九拾軒
一半潰三拾軒 一土蔵潰百弐拾七
一小屋潰百九十 一死亡人六拾五人
一怪我人三拾三人 一死馬四疋
一怪我馬四疋
金浦村
一潰家百軒 一潰焼失壱軒
一半潰家八拾六軒 一土蔵潰六ツ
一土蔵半潰三拾壱 一小屋潰三十五
一死亡人拾弐人 一怪我人三十人
一死馬三疋
芹田村
一潰家四拾八軒 一潰小屋九
一土蔵潰四ツ 一死人五人
一怪我人八人 一死馬壱疋
飛村
一潰家廿五軒 一半潰五軒
一小屋潰六ツ 一死馬五疋
三森村
一潰家弐拾四軒 一半潰家九軒
一土蔵潰五ツ 一同半潰六ツ
一潰小屋九ツ 一死亡人弐人
一怪我人九人 一死馬壱疋
赤石村
一潰家拾九軒 一半潰壱軒
一土蔵半潰五 一小屋潰弐ツ
一死亡人六人 一怪我人四人
一死馬弐疋 一怪我馬弐疋
琴浦村
一潰家三拾八軒 一怪我人四人
但し村中不残
一死人五人 一死馬四疋
出戸村
一潰家拾三軒 一同小屋十二
一潰塩釜屋九 一大破土蔵壱ツ
一怪我人壱人
右之外細ニ御尋候ハゝ承り書付ニ而可申上哉与伺可申
上候
一御通筋村々高等御尋有之候ハゝ左之通
前川村
一高三百拾四石余 五ツ取 本田
一高百七拾五石余 三ツ取 新田
一小物成金弐両九拾七匁三分八厘
大竹村
一高三百拾五石余 五ツ取 本田
一高百七拾九石余 三ツ取 新田
一小物成金三両 六分壱厘
伊勢地村
一高百三拾石余 五ツ四分六厘八毛取
一高壱石余 三ツ取
一小物成金八拾匁三分八厘
赤石村
一高三百三拾石余 五ツ弐歩取五ツ四歩取 本田
一高弐拾弐石余 三ツ取 新田
一小物成金弐両 弐拾三匁七分八厘
金浦村
一高百弐拾四石余 五ツ八歩取一高弐百三拾石余 三ツ取三ツ弐歩八厘取
一小物成金弐両 弐拾四匁七分三厘
黒川村
一高五百七拾六石余 四ツ八歩取 本田
一高百八石余 三ツ取 新田
一小物成金三両 八拾八匁八分壱厘
芹田村
一高八百拾四石余 五ツ弐歩取五ツ四歩取 本田
一高三拾八石余 三ツ取 新田
一小物成金四両 八拾四匁四分六厘
三森村
一高弐百拾六石余 五ツ五歩取 本田
一高三拾石余 三ツ取 新田
一小物成金壱両 五拾六匁三分壱厘
飛村
一高弐百五石余 四ツ弐歩取
一高三拾七石余 三ツ三歩取三ツ壱歩壱厘取
一小物成金壱両 五拾四匁壱分四厘
琴浦村
一高百五拾八石余 五ツ四歩六厘四毛取 本田
一高拾石余 六ツ取 新田
一小物成金壱両 弐拾九匁三分
室ケ沢村
一高百三拾三石余 五ツ七分取 本田
一高八石余 三ツ取 新田
一小物成金壱両 拾九匁弐分五厘
出戸村
一高四百六石余 五ツ七歩取 本田
一高三拾四石余 三ツ取 新田
一小物成金三両 弐拾弐匁四分弐厘
子吉郷
一高弐千百五拾石八斗六升余 平均三ツ四歩五厘五毛取 本田
一高七百八拾四石五升五合余 三ツ取 新田
一小物成金拾九両 八拾壱匁三分弐厘
右答書先例ニ付御下被成候、右之外ニも差懸種々御尋等
も可有之候、其所々ニ而茂前々御巡見使御通行之節諸帳
面等茂可有之義ニ付万事差支無之様兼而申談心得居可申
候
但御尋無之儀者決而差出申上間敷候
戌四月
（和右衛門万覚帳）
一文化元年甲子年六月四日之夜四ツ時大地震にて庄内川
北川東ゟ仁賀保貝浜・塩越・平沢迄、其外在郷皆々本
庄城下・子吉・西目・両前寺・琴ケ浦迄家小屋潰れ、
田畑共に夥敷いたみ、所々山崩れ、塩越象潟景色・蚶
満寺地中・金浦磯辺泥水湧出事おそろしき事に候、此
辺も田二番草取かゝる時節にて有しか、稲ゆすり込ま
れ苗代之如くなり候処、翌五日早朝ゟ稲起し候へは一
日も早く起候稲は生立も格別、秋之実入りも相応に相
見候、夫ゟ年中地震昼夜不限よる、同月廿六日夜大風
に大雨大雷り大地震也、前代未聞之事に候、此時中小
屋文助・出戸万助と申者両人雷にて卒死いたし、仁賀
保辺は又仮り家等潰、七月八日之朝も地震強、所々に
て仮り家つぶれる、同十二日も余程つよくよる、それ
ゟ少々の地震数を知らす、葛法村之びわ堤四日之夜破
れ、水の音おそろしき事也、人々つなみと思召おそれ
入候
此時地震潰家
安兵衛
玉池村にて
弥五作
儀兵衛
久右衛門
舟岡村にて
作兵衛
助重郎
あば死ス
小吉
金兵衛
七兵衛 小ヤ共ニ
清五郎
埋田村にて 与三郎 小ヤ共ニ
五右衛門
与八郎
惣右衛門
新左衛門
あば死ス
其外半潰之者数知らす
薬師堂 十九軒
下郷にて
藤崎 廿六軒
其外浜辺在々数知らす
本庄御領内御上にて御改に付書上候
惣潰家都合 千間
怪我人 百壱 人
死人 百拾 人
馬も所々にて死す
其節御上ゟ潰家へ米壱俵宛御合力被下候
時の御代 御家老
六郷佐渡守 六郷外記殿
六郷数馬殿
古郡七左衛門殿
滝沢七郎