地震史料集テキストデータベース

[未校訂]一宝永四亥年十月四日午刻大地震山々崩れ、家蔵石垣等を
もゆりくすし半時計過[潮夥|ウシオ]敷わき出高浪但シ浪高カ浜表にて壱丈二尺と
いふ林浦野地村迄入尾鷲中家蔵不残流失、老男女数多溺死
又ハ少々助リ上リ候者も有之惣而流死人五百三拾餘人其
外生類迄流失前代未聞之大変なり、延宝元禄之頃も津浪
入候得共少々之儀にて候、慶長九年にも津浪入候よしに
候得とも人家を流し候程の事ハ無之由申伝へ候
一此時御郡奉行水野九左衛門殿・御代官幸田彦左衛門殿・
御郡奉行喜多村孫九郎殿若山ニ御入被成候、御目付佐武
源八殿若山ニ御入同川合善右衛門殿儀御役所御当番ニ候
得共御城米御用ニ付新宮領井田村へ御越ゆへ津浪に御の
かれ被成候、水野九左衛門殿・幸田彦左衛門殿御両人浦
浦御見分之上残り之人数へ米・味噌・塩・箸類・農具・
湊道具・糸取車若山ゟ御廻し在々江被下置候、米は在々
御蔵ゟ御出粥米として被下命を助り誠以難有奉存候儀難
尽筆紙候、家財を流候面々流道具等拾ひ集め木屋掛ケ
候、住居不自由成儀言語に絶候、其年之御年貢御赦免其
上山海之稼元銀夫々御見計ひ御貸被成候
一亥十月十七日仲助市大庄屋役当分被　仰付霜月十六日本
役に被仰付候、享保三戌九月源十郎と改
一御目附役所御口前銀札役所流失、銀札役所は手代役人不
残流死、役人壱人煩・壱人助リ上ル、先大庄屋小門与助
家内不残流死、浪入候所々別帋絵図ニ記之
一尾鷲之内残リ候所々ハ野地村に家三十軒、林浦に二十軒
余、矢浜村半分程、天満過半、水地少々、九木浦塩端ゟ
流れ候、早田浦ハ無別条、須賀利浦半分程、大曾根行野
少々
一他所浦々浪入候在々長嶋・三浦・矢口・引本・錦浦・古
里・海野・三木浦・甫母・新鹿・遊木・大泊り・小泊り
但シ入江に浪入浜磯ヘハ浪不入此ゆへに津浪と言となり名柄少々、梶賀・曾根・古江
一浪不入浦々木本・波田・須盛・松須野・早田・道瀬、享
保十二未年迄廿一年之義但シ浪入候後若山御目附田中亦八殿御国奉行浅井忠八殿御奉行上野
三郎右衛門殿□々御廻り被遊候（後略）