地震史料集テキストデータベース

[未校訂]寛延四年未年四月廿五日越後国高田大地震書記
一夜丑之刻俄ニ大地震ニ而潰家死人
一家数千八拾弐軒潰家
一同四百拾軒但潰家同前住居不相成
一同六百拾四軒破損
一即死人弐百九拾弐人内男百拾八人女百七拾四人
一土蔵百九拾六棟内四拾六棟潰百五拾棟破損
一宮社惣而無潰社家大方潰
一伝馬宿死馬弐疋怪我馬八疋
一寺院六拾九寺潰寺中除キ死人廿余人
一御家中屋敷長屋百弐拾軒余潰
一同八拾軒余半潰
一同七拾軒余大破損
一即死人四拾余人
高田領村々
一家数弐千九拾軒潰
一同三千百四拾余軒半潰
一寺院百余軒内五拾余軒潰残リ半潰
一土蔵七拾五軒余潰
一社家弐拾軒余潰　但五社無潰
一即死人僧俗男女五百五人
一怪我人弐百三拾余人死牛馬九拾弐疋
一大小橋五拾弐ヶ所
一西浜名主有馬川虫生村江津村之山崩にて村中家は不残土
底埋人不残死す何程と云事なと不知
一今町半分程家潰残破損土蔵も半分程潰死人五十人余
一潰家下ゟ出火春日町家数弐拾軒余焼失死失人十人余
一相菊町出火弐拾軒余焼失西村町十軒余死人其外潰家より
出火夫数不知諸人潰家下ゟ漸々人々助られ辛キ命を助り
迯出候処右出火にて諸人又十方を失ひ申候夜明方漸々出
火何れも止り申候
一廿五日之夜地震夫より時々之地震廿六日ゟ五月十日まて
百余度震ひし六月壬六月中迄地震止る事なく一日四五度
つゝ夫ゟ段々遠く相成候処九月三日暮地震出し人毎に外
江迯出し候段々事静り候得共少々つゝ震ひハ一日に二三
度宛不止十一月六日夜五ツ時同八日夜九ツ時余程震ひ夫
ゟ静り申候乍然少々宛は申年正月二月比迄折々震ひ申候
一未五月朔日皆々裏小屋懸ヶ致住居候処五月十日夜大南風
ニて諸人安堵不致候処同十一日朝五ツ時上之（カ）九之在荒井
ゟ西在迄黒キ砂吹立ルを出火と見請諸人驚き十方を失ひ
候所早速静り人安堵仕候かゝる時節如何成不思議有之か
希代の事ニ候
一未正月廿五日ゟ廿八日迄大雪壱丈七尺降申候同廿九日赤
き雪壱寸程降申候同四月十四日夜戌之刻ゟ布雲出ル西之
方ゟ東之方江出ル長弐丈余同十五日旗雲出ル同十六日同
雲出ル同月中旬ゟ毎日からすなき声悪敷同廿五日昼日色
薄赤シ早天より雲御座候暑き事六月のことし同日暮六ツ
時前ニ烏集り一群となりて東之方へ飛行く事数多し右之
外色々異怪成事とも有之候得とも諸人不知候同夜丑之三
刻大変同四月廿八日ゟ天気続申候
一田方地震にて大痛之水有之候田地くべちを返したること
くニ而田作難植付諸人の歎き此上あるへからす然ル処五
月廿六日ゟ天気合冝敷諸事作方近年に無之満作にて諸人
大慶
諸相場之事
一御蔵前金拾両ニ付三拾五俵五斗入
一町米弐拾三四匁五斗入大豆拾五匁小豆拾七八匁操綿銀壱
匁ニ付目方五拾匁銭壱分ニ付壱貫百弐文壱匁ニ付五拾八
文遣右之通ニ御座候其外諸事下直にて売事
高直之物
一材木鉄釘葭釘繩ニ至迄別而高直上大工六日壱分中大工七
日壱分鳶者七日八日壱分位手人足壱人之手間百文より百
四拾文位
一四月廿五日夜大変廿六日より廿九日まて三日之間御上様
ゟ御対面所ニて御扶持被下置候
一十一月江戸より金六千両御拝借被成候右之内三千両ハ御
城御普請聊御城は潰不申破損ニ御座候弐千両在辺ニ下置
候千両ハ町中潰家壱軒ニ付壱分宛破損家壱軒六匁五分ツ
ツ右之通十二月名主より被下置候