地震史料集テキストデータベース

[未校訂]（古手扣筆者不詳私家所蔵其一、自延宝二寅年　至享保九辰
年）
一同十一月廿二日江戸大地震神社仏閣破損甲府様御長屋ゆ
りくづれ其外諸大名方御屋敷大破殿様御奉書ニ而御火消
被仰付候同廿九日水戸橋より出火大火ニ相成新橋浅草橋
和泉橋両国橋その外橋々落死人数万之よし
一殿様御屋敷下谷浅草二ケ所焼失地震ハ一日に十二三度計
ニ而止不申廿二日之地震ニハ地割或ハ津波立申候宗対馬
守様御奥様ハ有馬玄蕃様の御息女さまのよし去る頃御縁
組の所ニ此火事ニ御立退両国橋中より落候所ニ御乗物行
懸り御乗物川ニ落申候よし御供之もの共切腹或ハ川へ飛
入死申候よし
一殿様此度の火事ニ而御手から被遊江戸表狂歌
百なりのふくへかず〳〵忠の家
善悪ともにたのめ将軍
狗ともの吠る声音に火事消は
ちそくゐんこそさひを取るへし
是ハ狗ともを御大切に被遊候事ハ此知足院のわざの由に
て此度の地震火事ニて江戸並小田原惣して江戸三十里四
方内にて人死弐拾壱万七千三百拾三人と申上候よし同夜
庄内地震
一去未年米沢ノ城主上杉弾正様東海道地震ニ而ゆり崩レ候
ニ付御手伝被仰付候はこね山大石ぬけ出候ニ付
「古扣年分ケ帳壱」
○同未霜月廿二日夜江戸大地震同月廿九日小石川より出火
大火事ニ成ル向柳原下谷両御やしき御類火此大地震と大
火の変事ニ逢死人
弐拾壱万五千七百拾三人と公義御帳ニ記候よし
右大地震ニ付其頃の歌所中院大納言殿の詠歌
国津神千代のいはほをゆりすへて
うこかぬ御代のためしにそひく
右歌為褒美自公義中院殿へ弐百石御加恩被下候よし江戸
より申来ル
別古扣帳ニ出
○同年未霜月十八日江戸四ツ谷より出火芝海手迄延焼其砌
御奉書御到来ニて殿様御出被遊赤坂四丁目ニ於て両口ノ
火御防留遊され候同廿二日夜大地震之節甲府様日比谷御
門ノ御屋敷御長屋淘り潰れ出火に及候付此夜も御奉書来
り早速御出被遊右の御長屋御防キ留被遊候同廿九日小石
川辺より出火及大火候節是亦御奉書ニて早速須田町へ御
出両口ノ火御防留被遊候右三ヶ度の御増火消無比類御働
のよし御町奉行所御指図を以右火下助り候御町人共不残
御屋敷へ為御礼罷越候右大地震ニて御城大破ニ及候出火
等之節御用向ノ為と有之郭へ御詰被成候様ニと被蒙仰候
御方様ニハ殿様榊原式部様本多能登守様板倉周防守様板
倉甲斐守様松平□守様右御六頭
殿様此度御首尾殊ノ外冝敷江戸中沙汰有之候よし右大地
震大火両度ノ大変ニ而死人之数委曲在別記