地震史料集テキストデータベース

[未校訂]（南旧秘事記）
岩鷲山噴火
一　貞享三丙寅年二月二十九日より空曇　夜中より雪降
三月朔日少々雪降　同二日には時々雷か雪おろしの様に
鳴る　然る所北上川の水濁諸木浮流候に付　御徒之衆
を以　川端通見廻候様被仰付被遣候所　弥右之通にて木
の根　或は家財様の物流候由申出候に付　何も不審に存
居候内　同三日の晩七ツ時過に空晴　岩鷲山焼頂上は
夥敷黒煙立　及暮に随ひ火の色見得　幅一間程長さ十丁
に及候様に相見得申候　尤火の色赤く　四日の暁迄火見
得申候所　夜暁候へは雲覆ひ見へ不申候へ共　雲の内煙
の様に見得候　依之君公山屋図書を角懸村一本木村とも辺迄見
分に被遣　右之次第書付　重信公へ御飛脚を以申上らる
依之江戸表にて覚書　阿部豊後守様へ相坂五郎左衛門を
以被仰遣候趣
覚
一　南部大膳大夫城下盛岡　去る二日空曇　雪少々降雷の
様に鳴申候　同城下南之方流申候北上川の水濁魚抔流候
七ツ時分より空晴　城下より西の方に岩鷲山と申山煙立
及暮申候に随ひ火気幅一間長さ十丁に及相見候　城下迄
灰降申候
一　同四日の明方迄火見得申候所　夜明候へは　山へ雲か
ゝり　火見得不申候　然共雲の内には煙の様に相見得申
候
一　右之山へ見分の者遣申候所　山上より麓の沢へ泥水流
川の様に流申候　未た雪多く御座候故　火気にて雪氷多
く流申候や　氷流るゝ音強く聞得申候　灰降り震動仕候
故山上は見届不申候　此山上少々宛不断焼申候へ共
此度之様に強く焼申候義無御座候以上