地震史料集テキストデータベース

[未校訂]安政元年十一月四日、江戸大地震、幷諸國共同斷、海邊大津
波、幷火事等、三災有之。
四日辰下刻、江戸大地震、諸所損破有之。
此日、箱根山大に震、二子山岩石轉落、道路塞る。
豆州下田港は地震強、市中火災有之其、時洋中ゟ津波打寄、
市中六十八町、不殘平原と成、此處人別三千九百七人之内、
八十五人死失と云、但出役之衆中、怪我無之、尤下々に至
而者、死失二三人も有之由。言語同斷之天災也。
巷説、津波後、即日魯西亞船ゟ醫師兩人を、筒井、川路へ
見舞として差越候由也。異船も大に破損せしが、水難の者
を多人數救ふと云。此節、八丈島（縞）三反、羽織一、筒井肥前
守、川路左衞門尉、伊澤美作守、都筑駿河守江、八丈島二
反、羽織一づ〻、松本十郞兵衞、村垣與三郞、古賀謹一郞
江、右は下田港地震津波等、不容易天災之處、何れも怪我無
之段、達御聽、先以被遊御安心候。不慮之天災、可爲難儀
思召候。依之出格之譯を以、御内々被下之旨也。
同時、京都大地震、乍併當六月之地震ゟは、輕き方とは乍
申、暫の内不相止候に付、即刻、
主上、庭上へ御立退、堂上方始、諸司代、其外武邊之輩、
火事具着用、追々參内、御築地内大混雜、翌五日夕七時頃
に至、又々大地震、夫ゟ夜に入、又大に震と云共、無別條。
攝州住吉社の神馬、四ツ頃より何方へ參り（候脱カ）哉、行衞不相知、
同九日晝頃、泥まぶれになり歸ると云。此邊地震軽し、此
頃、大坂に者、未申の方に當て奇異なる赤雲出ると云。三
州岡崎、矢矧橋震落、又富士山少し崩麓、川江落、又富士川
暫く水盡るといふ。
四國路同斷、別而強く、阿波、土佐両國、大津波、死人不
知數と云。
右之外、東海道筋大地震に依而、一時に出火す。海邊津浪
に而、死失、怪我人夥し。