地震史料集テキストデータベース

[未校訂]○本書ニ「右へ度々写候ハヾ、文字ニ書違有之
候モ難計存候」トアリ、
第三○第一、第二ノ届ハ、他書ニ據リ前ニ收メタルヲ以テ、茲ニ省タリ、
私在所松代、当十四日先御届申上候通、居城際迄
水逼付候次第ハ、犀川押出シ□小松原下続土堤
乗越、夫ヨリ川中島一國水押來ル、千曲川水上、
城下ヨリ壱里程隔シ横田村辺ヨリ下続、總テ突入
候水勢甚強ク、下筋ヨリモ追々湛來リ、交溢水ニ
相成、次第ニ逆流イタシ、城内地陸ヨリモ、水丈
高相成候処、去文政中、御聞置申上築立候水除土
堤ニテ相防候処、及大破候得共、稠敷急難除申付、
其内致減水候故、危相凌、城下町続エモ上下ヨリ
差上候程ノ儀ニ付、流末ノ儀モ川東川西并中野平
辺迄致亡（充カ）満、潮（湖カ）水ト相見候処、次第ニ及減水候ニ
付、早速見分差出候得共、大小橋々多分流失、其
上水引候テモ、地震ノ度溜道式押掘、通路難相成
場所破方ノ儀ハ、段々水嵩相増、深サ二十丈ニモ
及、少々ヅゝ乗候ニ随ヒ、岩倉山麓ノ方、追々缺
崩候テ、水筋相付、大水乗初候テ、一時ニ巖石押
崩候由ニテ、岩倉山麓ノ方エモ多分缺込、数日湛
溜候大水、川中島ヘ押出シ、兼テ右為防此度俄ニ
築立候小市村渡舟場続両岸〓土堤石俵等ノ儀ハ、
川中島川東川北御料払領村々ノ急難除ノ儀ニ付、
領内ノ人カヲ相盡、并近領ノ水冠ニモ可相成村々ヨ
リモ、大人数差出、精々普請致候儀ニ御座候処、此
度洪大ノ水勢ニハ、万分ノ一ノ防ニモ不相成、暫時
ニ押流、兼テ御届申上候犀川筋押埋候湛三ヶ所ノ内
小市村渡船場北ノ方眞神山抜崩候儀ハ、高サ貳拾間
程、南北八拾間程、東西五拾間程、川式エ押出シ、
残川幅ハ纔七軒程相成、其侭差置候テハ、聊ノ水ニ
テモ切込儀ニ付、可成大堀取申付候得共、中々人カ
ノ（不カ）可及之処、此度ノ水ニテ忽ニ押流、百数拾人ニテ
動候程ノ大石ヲ、川下或ハ川辺村内耕地等迄押出シ、
小市村突出候辺ハ、水丈六丈余ニモ及候次第、川辺
村ノ内ニモ、就中、四ツ谷村ノ儀ハ軒別八十軒余之
内、六七（桁カ）拾軒相残悉流失致、跡一圓ニ河原ニ相成、
其地（〓）村ハ（マカ）地震ニテ倒潰ノ居家、不残押流、其上山中
筋水冠候村々流失ノ居家、水面ニ浮居候ニ付、為繋
留置候処、湛溜ノ大水、一時ニ押払候ニ付、何レモ
縄切、其外山中筋両岸ノ山等、多分缺落候付、大木
等モ一度ニ流出シ水押下シ、居家エ突掛、是が為ニ
押倒流失致候モ夥敷、流死八人程、流家六百貳拾七
軒程、其余石砂泥水入数多有之、川下村々ノ内、高
井郡小沼村等、昨十八日ニ相成、漸ク居住向ハ水引
ニ相成候得共、地窪ノ耕地ハ、猶壱丈モ水溜居候次
第ニテ、損地等ノ儀ハ、中々凡ノノ見極モ不行届、
丹波島宿辺ヨリ千曲川犀川落合ノ辺ハ、一國ノ乱
瀬ト相成、丹波島、川田、福島三宿、前條ノ次第、
且又村方米穀ノ儀ハ、川手村ノ外、仮令水上候テ
モ、流失ハ致間敷ト心得、棚等拵テ上置候穀物、
居家一同流失致候モ不少、村々〓万ノ儀ハ、所々
エ役人差出、食物賄出所ニハ小屋ヲ掛手充専申候、
尤前條ノ通大石土砂押出シ候ニ付、川中島用水三
堰、并小山堰共、水門揚口跡形モ無之押埋、呑水
無之、救方食物焼出候ニモ、場所ニ寄二三十町ノ
近（遠カ）方ヨリ水相運候次第候得共、村々人別ノ儀ハ、
大地震ニテ居家倒潰候者迄モ、急難除普請ノ儀ハ、
申渡ヲ不相待、日々出精築立土堤、一時ニ水溢参
破壊致シ、居家流失水冠ト相成、一統途方ニ暮候
為体ニ付、日用ノ呑水、眼前ノ苗代、水引方、堰
普請モ、早速行届申間敷、誠以差支、人心不穏、
甚不安心奉存候、専手充方申付罷在候得共、兼先
御届申上候、大地震ニテ城内初家中屋敷、城下町
分村々潰家数多、死失夥敷、田畑通路等迄、地裂
床違、山々抜崩、大変実ニ打続、此度ノ大水、先
月廿四以来、今以晝夜震止不申、何共気遣鋪次
第、甚以心痛仕候、猶委細ノ儀ハ、追々取調可申
上候得共、再度先御届申上候、以上、
四月十八日　御　名
○コノ届書ハ、前ニ出シタル　見集録所載ノ分ト同
一ノモノナレドモ、其文体大ニ異レルヲ以テ重録セリ、併セ
看ルベシ、
第四番之御届、
先達先御届申上候通、私在所信州松代、去月廿四日
大地震以来、度々ノ震動ニテ、城内并家中屋敷、町
在ノ村々、人馬死傷、居家倒潰、大破、田畑損失、
其上山崩ニテ犀川水湛水入ニ相成候村々、流家并田
畑損失ノ
覚
一御城内潰倒大破ノ分、略之、
一家中潰三十八軒、
内侍八軒、足軽仲間十七軒、
一壓死人三十五人、　内男十三人、女貳十貳人、
一怪我人貳拾七人、内男十三人、女十四人、
一高三万貳千八百五石余、新田、
内壱万八拾五石余、　田方、貳万貳千七百貳拾石、　畑方
村数百五拾一ヶ村
一民家潰七六百七拾貳軒、
内
四拾九軒、　焼失、
貳百軒、　焼失之上、湛水ニ入、
六百軒、　湛水ニテ浮出ス、
三百軒、　山抜、土中埋、
六千五百拾壱件軒、　潰、
一壓死人貳七百七拾五人、
内
社家、　壱人、
僧、　拾人、
男、　千貳百貳拾貳人、
女、　千五百四拾貳人、
内三百四拾六人、山抜、土中埋死、
一穢多壓（死脱カ）人七拾八人、
内
六拾七人、山抜、土中埋、
一斃牛馬、　貳百六拾七疋、
内
六疋、山抜、土中埋、
右之趣、御届申上候、
四月十八日
三月廿四日夜地震ニ付、
御領分郡分、
埴科郡、
一壓死貳拾八人、　内男拾人、女拾八人、
高井郡
一同三拾三人　内男拾壱人、女廿貳人、
更級郡
一同六百三拾四人、　内男三百拾三人、女三百廿壱人、
水内郡、
一壓死千八百六拾四人、　内男百九拾壱人、女百五拾八人、
〆貳千五百五拾九人、　内男千貳百三拾人、女千三百貳拾九人、
右之内、
三百（四十脱カ）九人、　内男百九拾壱人、女百五拾八人、
但山抜、土中埋死、不相見分、
僧、　八人、
神主、　壱人、
町、町外、
一壓死三拾五人、　内男拾三人、女貳拾貳人、
總〆貳千五百九拾四人、
内
男千貳百四拾三人、
女千三百五拾壱人、
同四月十三日夕、水押、
一流死人貳拾壱人、　内男大人、女拾五人、
三口〆貳千六百拾五人、
町、町外潰、半潰之分、
一居屋潰、　百三拾貳軒、
一同半潰、　百五軒、
一同半潰、　三拾九棟、
一同半潰、　四拾七棟、
一物置ノ潰、　四拾壱棟、
一同半潰、　三拾四棟、
一酒造蔵潰、　貳棟、
一酒造蔵半潰、　壱棟、
一怪我人貳拾七人、　内男拾三人、女拾四人、
同断八幡神領、
一居家潰、　四拾軒、
一同半潰、　拾八軒、
一即死人、　拾七人、
一怪我人、　拾八人、
其外別当、神主、下社儀トモ、潰、破損多シ、
善光寺人別御書上、
一即死人拾四人、　衆徒、
一同三拾貳人、　中衆、
一同壱人、　妻戸、
一即死四拾四人、　大勧進家来、
〆九拾貳（壱カ）人、
一即死貳壱百七拾九人、　大門町、
一同貳拾九人、　上後町、
一同九拾三人、　東町、
一同八拾貳人、　新町、
一同百拾三人、　横沢町、
一同五人、　七瀬町、
一百四拾人、　櫻小路、
一同貳百拾五人、　西町、
一同貳百六人　横町、
一同八拾八人、　岩石町、
一同七人、　平柴村、
一同拾五人、　箱清水村、
〆千貳百七拾五（ニカ）人、
一即死千貳百九人、
右ハ寺中并〓坊止宿旅人、合貳千三百四人、
右之外、家内不残死失ノ者有之候ニ付、止宿旅人、
生死不相分、
同断新安社領、
一軒別拾四軒ノ内、
一潰家、　四軒、　一半潰、　三軒、
一即死、　貳人、　一怪我人　三人、
御近領飯山、同断ニ付、
一侍徒士并小役人下々迄、
即死八拾六人、　内男四拾人、女四拾六人、
一城下町人、
即死三百三人、　内男百三拾八人、女百六拾五人、
内
非人壱人、穢多三人、
〆三百八拾九人、
（前文缺ケタリ、）
一本新田高四石八升五合、　但水丈五六尺程、
一同籾貳斗五升、
一本田高三石壱斗六升、　但水丈、右同断、
竹生村、
一高貳拾四石五斗余、　但川辺嵩水深貳丈五尺、川（式脱カ）貳丈六尺、
一籾三斗、
新町村、
一本田屋敷共高四拾石四斗七升余　但水源五六尺ヨリノ、一大入九尺迄、
上條村、
本新田屋敷共
一高貳拾石三斗、　但水深五六尺ヨリ、二丈壱尺迄、
水内村、
安用組、
一高拾壱石、　但深壱丈八尺程、
右村彌太郎滝辺ニテ水深四丈貳尺、橋下辺ニテ六
丈壱尺程、
同村、
平組
一本田屋敷共高九拾九石、　但水深三丈ヨリ、五丈迄、
河急ニテ五丈四尺、川式六丈四尺、
三水今泉村、
一本田新田屋敷共一高六拾石五斗九升、　但水深壱丈ヨリ五丈程、川式七丈五尺、
氷熊村、
一本田高五石四斗、　但水深五六尺程、
山平林村、
一〓六石〓十九升、　但水深五尺ヨリ壱丈程、
土尻川水湛村々、
長井村、
一高壱石三斗貳升、　冥加場、但水深壱丈八尺、
一籾三斗六升、
念仏寺村、
一本田高拾貳石五斗、　但水深壱丈六尺程、
五十里村、
一本田屋敷共高拾六石貳斗七升、　但水深貳丈七尺ヨリ、川式ニテ三丈貳尺程、
右之通今般見分出役被仰付、明細相改候処、両
川当節水入ノ場、左（右カ）ニ申上候次第御座候、以上、