地震史料集テキストデータベース

[未校訂]信濃国村々大地震之趣、先御届書
当月廿四日、晝夜快晴、暖気にて至極穏之日に御
座候処、同夜四ツ時頃、大地震にて、信州中之條
私陣屋構練塀、所々震倒し、其外陣屋元近辺村々
農家手弱之分は、下家廻り倒れ、厳敷振動いたし、
暫相立候処イ漸相鎭り、夫より少々宛间を置、不絶震動、陣
屋より北之方に当り、雷鳴之如き響有之、夜明迄
之内、凡八十度余之地震、翌朝少々靜に相成候得
共、今以震動相止不申、支配所水内郡村々之内に
は、潰家、怪我人、死人䒭も有之由に御座候得共、
未断出不申、追々風聞之趣承り候処、同国川中島
辺は、民家一村不残、又は過半震倒れ、其上出火
にて不残焼失いたし候村々有之、一村三四十人位
より凡三百人程も、即死、怪我人有之、善光寺町
は、家並木残震倒し、其上焼失之者、大造有之、
都而往還筋は、此節善光寺供養に付、夥敷旅人泊
合居、夫故死人も多分御座候由、山中辺は、手遠
片寄候故、様子難相分候得共、犀川上手にて山崩
有之、川中留切、流水更に無之、丹波島渡船場干
揚り、歩行渡いたし候由に御座候、越後国表之儀
は、如何に御座候哉、様子相分不申、右者、風聞
迄之儀にて、未聢と難相分候间、早速手代差出、
支配所、其外見分吟味之上、外最寄村々損亡をも
風聞相糺し、委細之儀は追々 イて可申上候、且御領陣屋
屋、同国佐久郡村々之儀も前同時、大地震いたし
候へども、善光寺辺とは里数も相隔、次第に相劣
候哉、陣屋并支配所、其外最寄私領村々共、纔宛
之破損家等有之趣に候得共、為差儀も無之、怪我
人、亡所等無御座候、先不取敢此段御届申上候、
以上、○原本、且御預陣屋以下百四字ヲ脱ス、今藤川寛雜記ニ據テ之ヲ補ヘリ、
未三月廿五日　川上金吾助印
御勘定所