(天明二年)
○七月十四日夜九時、十五日朝大地震、諸人戸外へ出る、この間少しの地震は算へがたし、、此節相州大山の辺、ことの外つよく、屋上よリ石を落し、山鳴て恐ろしかりし、又小田原はわきて甚かりしとそ、、
〓庭云、七月の初めより、小地震は日毎にあり、今十四日子刻頃、物音つよくゆり出し、人々寝入頃なれば、殊に驚くこと甚し、明る日は空くもり、残暑つよく、日暮を待かね端ゐして涼居たるに、俄にゆり出し壁をふるひ、瓦落ち、戸障子打ち倒れ、あやしき小家は見るまに倒るゝも多かり、地ひゞきわれて氷紋の如し、八十年前元禄十六年大地震以後、かく甚しき事あらずと、百年近き老人語りぬといへり
注、本史料「増訂武江年表」は斎藤月岑編著の正続武江年表を喜多村〓庭、関根只誠、朝倉無声が補訂し大正元年に刊行されたものである。