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項目 内容
ID J3100145
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1855/11/11
和暦 安政二年十月二日
綱文 安政二年十月二日(一八五五・一一・一一)〔江戸及関東一円〕
書名 〔井原市史Ⅰ自然風土・考古・古代・中世・近世通史編〕岡山県井原市史編纂委員会編H17・3・31 井原市発行
本文
[未校訂]安政の大地震
財政に大きな打撃を与えた大地震が安
政二年十月江戸で起こった。この地震
はいわゆる「直下型地震」で、その震源は江戸直下にあ
ったと推定されており、マグニチュードは六・九といわ
れている。震害の著しかったのは、江戸とその東隣に限
られており、その範囲は直径約五、六里ときわめて狭か
ったが、江戸市中における被害は極端にひどかった。市
中の被害は、深川・本所・下谷・浅草が最もひどかった。
地震後に起こった火災で約一四町四方が焼失し、江戸町
方倒壊家屋約一万五〇〇〇軒、一七〇〇棟余、死傷者一
万人といわれる。武家方の被害は大名藩邸二六六藩のう
ち被害を受けたのが一一六藩、死傷者二〇〇〇人以上、
旗本四五〇〇人、御家人一万三〇〇〇人ほどが家屋その
他の被害を受けたと推定されている。
この大地震で旗本池田家の屋敷も大きな被害を受け
た。池田家用人は「御用状」で「御損ヶ所」を次のよう
に井原陣屋へ伝えている(市史Ⅳ五一八~五二一頁)。
一表御玄関大損し、御使者之間半潰れ
一表御書院并弐三之間共潰れ
一御小書院半潰れ、内御玄関并御広間・同詰所半潰
れ、其外内使者之間、溜之間損し、表御用部屋・
御使者之間・御畳之間・表御台所損し、足軽卯時
部屋共半潰れ
一物置潰れ、御厩半潰れ、大部屋潰れ
一表長屋大損し、内長屋大損し
一奥御広敷半潰れ
一奥御客座敷損し
但、先急場御繕ひニ而仮御住居
一御書斎御書座敷損し
一奥御居間・御弐階上下共大損し、御弐之間御座所
共大損し、御弐階上り口御廊下潰れ
一御仏間大損し、御戸棚惣[不残|のこらず]大損し、
一御八景御四季之間・御中之間・御化粧之間・御納
戸・御東之間・菊之間・御祐筆間・御六畳御中之
間・御三之間・御台司御末・同広板間・御湯殿・
次客部屋・長局其外共大損しニ而候
一御土蔵四ヶ所共土ふるひ落し瓦落、少しも御用ニ
[相成不申|あいなりもうさず]候
一稲荷社・御土蔵同断、尾砂子社同断
一弁才天石宮くつれ損し
一御茶屋大損し
 これによると、玄関・書院・奥広間・物置などが、全・
半壊しており、邸宅の他、土蔵や屋敷内の社祠までもが
倒壊していることがわかる。分家の様子については、「不
快中で書き取りができない」ことを理由にこの時は後便
で知らせるということになったが、もちろん分家の住居
も大破し、甚大な被害を受けていた。なお一橋家の被害
についてはよくわからない。
 安政の大地震は、「御用状」中に「誠ニ以御地之大変不
容易、明暦大火以来之大変」とみえるような大きな出来
事であったのである。明暦の大火とは江戸幕府はじまっ
て以来の大火で、江戸城をはじめ多くの邸宅や町屋を焼
失し、江戸城や江戸の市街の復興に多額の費用を要した
ことにより、幕府財政難の一因となったが、安政の大地
震も、当時外国船の来航で人心が極度に動揺しているう
えに、このような大地震が起こったということで幕府そ
のものの基礎を動揺させる要因となった。
 池田家で今度の地震で被害を受けた住居、その他全壊
を免れた場所、御殿だけでも元どおりに建て直すには約
七〇〇両を必要とすると推算され、土蔵・長屋などは別
であるから全体を修復するとなれば、相当な金額にのぼ
る被害額であった。そこで領主側としても、近来なにか
と出費続きのため、領民が難渋しないよう潰れた家屋の
材木・建具・そのほかの品でもって修復をすることにし
ている(市史Ⅳ五二五~五二六頁)。
 しかし、地震で大きな被害を受けて仮住まいの旗本池
田家はやはり幕大の経費を必要とし、格別差し支えてい
ることを井原村へ伝え、出金を要請した。そこで地元で
も金銭のやりくりが殊のほか難しかったにもかかわら
ず、大津寄重郎左衞門が「寄島譲り代金」の内一〇〇両
の送金を申し付けられ、送り手形(村送り証文)の通り
本家・分家の両家へ一〇〇両が送られたので、当面の入
用の手当てになったとして両家の当主は満足している
(市史Ⅳ 五三〇頁)。
出典 日本の歴史地震史料 拾遺 四ノ下
ページ 1476
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 岡山
市区町村 井原【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

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