[未校訂]十月七日
午後八時三十五分に恐ろしい地震が起きた。揺れが始
まったとき、私たちは夕食の食卓についていた。地震は
がらがらという大きた音で始まり、四分以上も続いた。
私たちはすっかり脅えて、ヴェランダを駈け下りて、家
の外へ飛び出した。エラは湿った芝の上にうずくまって、
「もう我慢できないわ。もう駄目よ」と呻き声を上げて
いた。一方私はアルベールにしがみついていたが、その
間中、地面は持ち上ったり下ったりし、家は前後に揺れ
動いていた。幸いにもその揺れは水平方向の揺れで垂直
方向ではなかった。もし垂直方向の揺れがそれだけの時
間続いたら、東京は壊滅しただろう。家のベルギー人の
コックは最初全く気を失い、次いで少しずつ気がついて
くると、激しいヒステリー発作に襲われた。全体的に見
て、今回の地震は辛い経験であった。それは六月二十日
の地震と同じくらい大きかったが、確かに長さはそれを
超えていた。しかし水平方向の揺れであったため、被害
はごく僅かに留った。