[未校訂]四月十三日
朝の三時に大きな地震で目が覚めたが、それはこの二
年近くの間に東京の住民が経験した最大の地震であっ
た。確かに驚くほどひどい地震で、公使館にいた日本人
は全員外に逃げ出した。エラは私たちの部屋に駈け込ん
でくるし、家はひどく揺れていた。アルベールは起き上
ったが、いざという時は慾が出るものなのか極めて落着
いた態度で素早くパジャマのポケットに煙草をたくさん
入れて、そっとマッチを擦って煙草を吸い出した。私は
地震が終るまでベッドに寝ていた。家全体がぐらぐら揺
れて物凄い音がした。有難かったことには、何一つ壊れ
なかった。