[未校訂]○七月廿三日、椽先の障子ひらきて例の筆記して居しに、
午ノ下剋頃にもあらん地震ふり出す、蚊帳の中釣りな
せる糸を下けて其先にありあふ茶台をひきかけゆり来
る方角をためしみしに、其糸西南東北にゆられたり、
はしめ目につきたるハ正しく未申よりゆり来るなり、
其動くうち大分長し、こは遠く大震ふる国有るかもし
らす、さらハ其ゆり来し方角をもておさは加能越か美
濃路又近江あたりにもあらんなと探りゐて人にもはな
して其左右をまつ、同廿六日卯ノ下剋頃、廿八日暁六
ツ時ころ又人おとろかすほとの地震ふる、かうをり
〳〵ゆり来れハいよ〳〵遠き国に大震ありしに相違な
しなと心をさためおけと、たしかなるうハさもきこえ
し、或ハ信濃又ハ近江に大震ありとかたるもあれとお
ほつかなし、さらハ余ほと遠きかたに此事ありたるな
るへしなと独うなつき居しそ馬鹿々々し