[未校訂]二十七(九月)日 甲子。冷気。雨風不止。夕方納じる。八ツ頃
ゟ御用出席。夜六ツ頃帰宅仕候。七尾屋次右ヱ門方、大
坂堂嶋、天王寺屋宗助と申者ゟ、西国九州邊の風雅の趣
申來候。書面珍敷事ともに付、左に寫。
うつし書畧
(中略)○長崎來状寫。一、先頃、十五七日頃ゟ砂糖、藥
種、追々引立申候。當月七日の昼八ツ頃、大地震ゆるき、
夫ゟ時々、昼夜三五度ツゝ地震ゆるき、九日の暮方ゟ大
風起り、夜四ツ頃まて、大地震たい間なし。夫ゟ大時化
なり。大風雨。夜通しニ吹ちらし、阿蘭陀屋敷石垣破レ、
大塀打越し、大津浪入屋敷の内の砂糖藏、其外、藥種入
藏さつはりと、津浪にて流れ行。砂糖類十万斤、丁子等、
藥種類流れ、唐船壱艘海中へ押込、漸、長崎の浦の内に
帆柱三尺斗、浪の上ニ相見へ申候。長崎の湊の御番所ハ、
九日の夜五ツ前ニ、石垣とも、何国へ飛去り候哉。行衛
知レ不申候。其外、橋流、人死ハ凡弐三千人と申事ニ御
座候。誠ニ古來稀なる大騒動ニ御座候。先頃ゟ、西国九
州の噂而已ニ而、心細キ程ニ御座候。先、作躰ゟハ大風、
雨洪水等の咄而已申來候。
下畧
八月廿三日 天王寺屋
宗助判
七尾屋次右ヱ門様
茂住屋八右ヱ門様
相場は寫置不申候。