[未校訂]十九日 十九日[天|て]気打[続|つゞ]きしが[昨夜|よべ]少し雨降出、けさ暁
頃よりみぞれいみじく[降|ふり]風たちぬ。されど軒のしづくひ
まなく落て寒さはことにもあらず。けさ家[刀自|とじ]の[言|いへ]らく、
「[昨夜|よべ]のなゐはいと[恐|おそろ]しかりきいかにおびえ給ひつらむ。」
「いな夢しらず、夜中斗にか」と[問|とへ]ば、「子一つ斗にかあ
らむ」と[言|い]ふ。[昨夜|よべ]は人のおこせし酒あれば例のと呑く
らべ、人にもすゝむとて[己|おの]れ常よりも[多|おほ]くのみつれば枕
とりしもえ[知|しら]ず、心[地|ち]よう打ふしつるなめり、さばかり
大地の打ふりつるにもおどろかざりしは、酒の徳いちじ
るかりしにこそとて、
豊みきのゑひのすゝみにうまいせし我をばなゐのふ
りもおこさず
二十二日 廿二日天気つゞきぬ昨日申のくだちなゐふれ
り