地震史料集テキストデータベース
[未校訂]（善龍寺過去帳）
一天保四年大地震あり
（中嶋文書）
六一 天保三年（ママ）四月
乍恐御注進奉申上候（大地震災害）
当九日昼午ノ刻前代未聞之大地震、夫より引続通昼夜ゆ
すり、所々山ぬけ大石等落往来指留り、猶更屋敷廻り田
所之石垣等大損仕り、別て此節茶摘之㝡中右相止メ道普
請ニ取懸り、誠ニ難渋之時分ニて候、村々怪我人多ク即
死之者拾人有之、当村ニても壱人即死仕候、誠ニ大変之
御儀ニて御見分御願奉申上度奉存候へ共、茶摘之時節ニ
御座候へは、乍恐追て御用御上り節山ぬけ跡田所損跡等
御見分被成下置候様奉願申上候、右之段乍恐御達奉申上
候、以上
東横山村庄屋
（天保三年） 中嶋哲次郎
四月 同村組頭
弥右衛門
同村百姓代
作平治
野口源五右衛門様
六二 天保三年（ママ）五月
乍恐御達奉申上候御事（大地震）
先月九日大地震ニて当村地内并下り方隣村大垣御領分樫
原村津汲村地内、所々山ぬけ往還通りえ石落、其後数度
之地震ニて追々往還へ石落一切通路難相成、往来留り居
申候處、漸此節迄ニ如何様共通行相成候程ニ夫々道直し
出来仕候、右等之趣早速御達可申上候と奉存候得共、往
来留メニ相成り居申候故遅り申候、仍之御達奉申上候、
以上
（天保三年） 大野郡東横山村
五月 庄屋
哲次郎
同 村 組頭
作平治
薗田荘次郎様
御陣屋
六三 天保三年（ママ）五月
乍恐御願奉申上候御事（大地震災害復旧御救）
先月九日之大地震ニて久瀬川往還通当村扣丁場、所々山
抜砂石等落埋り通路難成候処、此節迄ニ漸人夫通行相成
候様ニ砂石取除候得共、牛馬等ハ更ニ通路不相成、何れ
如元道直し不取斗候ハては難成、右入用金大法積立候処、
弐拾両程も相懸り可申、困窮之村方中々自普請ニ難行届、
当惑罷有申候、尤大垣御領分并青木九十郎様御知行所村々
右往還通扣丁場も同様山抜埋ミ候処、夫々御見分之上御
普請有之又ハ御手当金等被下置、此節道直し取斗申候、
右ハ谷筋一統之義ニ付当村扣之分も、急々道直し不取懸
候ハては難成十方暮罷有申候、右ハ御時節柄奉恐入候御
願ニハ御座候へ共、何卒御慈悲之御憐愍ヲ以右入用金廿
両、此節御手当被仰付被下置候様偏奉願上候、此段御聞
済被下置候ハゝ御蔭を以早速普請取懸り、往来指支無御
座様可仕奉存候、尤村方扣丁場之儀凡七十丁程も御座候、
右之内五十間又ハ八九間程ツゝ之埋場所御座候、其余共
大様不残刻通り夫々手當不致候ハては難成、右之通り我
ら之扣丁場大造之普請有之、誠以当惑難渋迷惑候得共、
乍併其まゝに捨置候ては奥筋よりも通行不被成、御他領
村々之分ハ取頼道直し取斗被下候て、難捨置御座候間、
何卒前顕之趣厚御憐察被成下置、右願之趣急々御聞済被
成下置候ハヽ、重々難有仕合幾重ニも奉願上候、以上
大野郡東横山村庄屋
（天保三年） 哲次郎
五月 同村組頭
作平治
右同断
弥右衛門
薗田荘次郎様
御 陣 屋
六四 天保三年（ママ）七月
乍恐奉再願候御事（大地震災害復旧）
先達て御願奉申上候通り四月九日大地震にて、田畑并屋
敷廻り等夫々損所出来仕候得共、右ハ両横山村一同之御
義ニ御座候、右之外近年猪垣六分通り土井垣ニ出来有之
候処、八九通り砂石ニて埋り抜落大造之人数掛り漸出来
仕候、猶又其上往還通り水波新田より樫原村大造谷迄七
拾丁之間、当村扣丁場ニ御座候処、砂石ニて埋り山抜数
ケ所ニて通路難相成、渡世之山挊相止メ砂石取除、山抜
之場所ハ当時之通路相成候程ニ大造之人夫相掛道普請仕
候、依之無據右普請中伊尾小嶋村より米麦味噌等貸り為
登相渡申候處、右拂金九両餘御座候、右金拂方不仕候ハ
ては難相済迷惑仕候、御時節柄恐入候御願ニ御座候得共、
右飯米代御手当被仰付被下置候様奉願上候、右地震後猪
垣普請道普請七百人余相掛り申候、右賃銀ハ北方御陣屋
へ御願申上可奉存候間、何卒御慈悲之御憐愍を以右願之
趣御聞済被下置候ハヽ、重々難有奉存候、以上
（天保三年）
七月
六五 天保三年（ママ）九月
乍恐御断奉申上候（大地震災害にて炭竃山代
金御断）
一御林山之内段木ニ相成り候木品伐り取り場所御座候付、
三月奉御伺候処入札ニ被仰付入札仕候処、村方祐次郎
西横山村太郎右衛門両人金高拾壱両之落札ニ相成り、
右代金も四月半金十月半金上納仕り、月数当四月より
来午之四月迄ニ焼取り候筈ニて炭竃九口打建申候處、
大地震ニて山抜埋釜三口、損し釜六口存外之大変ニ御
座候得ば、右山御断申上度段申聞候付、乍恐右様相成
候てハ御為筋ニも相成不申候間、右代金何卒来三月迄
指延し被下候様仕度奉願上候
一矢中谷霞懸り山代残金五両三月上納之筈ニ御座候処、
延引ニ相成居申候處、右地震ニて炭釜損しハ不及申、
右山ニて怪我人六人即死之者三人不時之難渋ニ御座候
間、残金御用捨被下候様段々願ニ付、乍恐三月比迄御
延被成下置候様御願申上呉候様達て相歎キ、私儀も兼
て吟味仕候処、覚さる大変ニ御座候間何卒御指延へ被
下置候様御願申上候、右両様共何卒御慈悲之御勘考を
以御聞済被成下置候ハヽ、取立方締り之義は急度申談
置可申候間、乍恐私おゐても御聞済被成下候様奉願上
候、以上
両横山村
（天保三年） 惣山締り役
九月 東横山村庄屋
中嶋哲次郎
御代官
御役所
六六 天保三年（ママ）一二月
乍恐奉歎願候御事（困窮の上山挊少なく年貢
猶豫）
一当村下地格別ニ困窮罷有候処、当秋以来米高ニて山挊
第一之所中々以其日々々之夫食手当も難相成り、及渇
命為躰ニて御年貢厳敷取立候ては、八九軒も立去り候
者共目前ニ御座候得は、乍恐左様仕候ては御大切之御
田地荒地も出来候義ニ御座候、尤当年ハ段木杣渡世ニ
仕候者ハ不及申ニ、農業作間々々ニ少々ツヽ伐り候者、
且又徳山様川下ケ之節沈木拾候者迄、夫々御年貢之手
当ニ御座候処、当年段木元締川下不仕候故、右品一銭
も間ニ合不申、猶又年々六月茶まゆ両作書入貸り入仕
り、御年貢仕送り来り候処、米高ニ付右仕送り呉候者
無御座、且又格別之御直段ニ付去辰年ニ指引仕候得は、
多分之増上納ニ相成り、必至当惑仕候、依之顧恐無據
奉歎願申上候、御慈悲之御憐愍ヲ以何卒当御年貢金之
内、五拾両来午六月迄御猶豫被成下置候様奉願上候、
右両作取入候節月両ニ付七分五厘ツヽ御利息を以、急
度御皆済可仕候間、何卒御慈悲之御勘弁を以御聞済被
成下置候ハヽ、重々難有仕合奉存候、左も難取叶御義
ニ御座候ハヽ、何方へ成共右金子出来候様、乍恐御聲
掛被成下置候ハヽ、右茶まゆ両作書入拝借仕り上納可
仕候、御直段違義ニて当年は御物成御運上〆上納高七
拾九両斗ニ御座候得共、右御願申上候通り御聞済被成
下置候ハヽ、残り之分何如様共上納仕り可申候、左候
得は当冬中ニ皆済仕候道埋ニ相成り、小前一同案心可
仕候、重々難有仕合奉存候、誠ニ前代未聞之難渋ニ付
無據奉歎願候、此段乍恐被為聞召分厚御慈悲を以幾重
ニも奉願上候、以上
東横山村庄屋
（天保三年） 中嶋哲次郎
十二月 右村組頭
弥右衛門
〃 〃
作平治
〃 百姓惣代
菊五郎
〃 〃
角蔵
野口源五右衛門様