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項目 内容
ID J2402721
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1804/07/10
和暦 文化元年六月四日
綱文 文化元年六月四日(一八〇四・七・一〇)〔羽前・羽後〕
書名 〔仁賀保地震記録一ノ坂事件顚末写〕仁賀保町教育委員会
本文
[未校訂](
仁賀保地震記録
池田慶治

本記録は三日市須田甚兵衛に有しを写せるものなり何れ
の何人の書きたるものなりやふ明なり然れとも院内平沢
附近をやゝ詳にせるを見れば或は其方面の者ならん哉
明治四十四年三月十八日 写
仁賀保地震記録
于時文化元年甲子六月四日の亥の刻大地震にて其動事大
風の軽毛を吹き更らす是によって村々の寺院人屋たをれ
伏事將棊の駒をたをすが如し山崩れて谷となり海かたぶ
きて陸となり堤沼土手破れて田畠濘となり土地さけわれ
て濁水しきりに涌き出で穴となる流民塗炭に堕入とは此
時をこそ申すべし明くれば六月五日の事なるに天気快晴
たらずして日光朦々たり鳥飛び来りて啞々として技(ママ、枝カ)
條に
鳴き群狐むらがり来りて鳴声粛々たり人侶所々に聚り涕
泣の声喧々として耳をつらぬき震毎日止まずして地揺々
たり鶏鳴暁をもようせば人色を直し夕陽西方に没すれば
人色そこなう然るに同月廿七日の丑の刻電光しばしば至
り雷庭厲々として鳴りひゞき人をぢ恐れて肝の滅びるが
如しかゝる処に大地震ゆり起り天には雷を頂き地には震
(ママ)
をしき黎民生きる心地なく唯歓念の涙を流して
又大風時々吹来り作物大に損失して飢餓となり荒霖より
〳〵到りて車軸屋根をとほし何かと人の災泣いてやまざ
りけり
蓋し地震破却の処をかぞうるに先づ塩越町家残りなくた
をれたる事、銭をつけるに売らずいたましいかな金営耀々
たる蚶満寺一時に 物となんぬ悲しいかな名にしおう象
泻は塩入ることあたわずして平沙眇々たる湖江嬋娟たる
風景忽に没して穢濁の陸となりにけりかだむる人もなか
りせば関は破れて敗北し中ノ沢辺はうづもれてわれて傾
く洗井釜にごれる水に大砂川いきづきにけり
人 (ママ)
つかれし鹿のかわ袋さげてとゞまる財もなし かく
とも知らず大須郷たおれし家はさらになしゆくゆく育つ
小砂川はまろんで起るちからなし岩にせがるゝ小滝村は
れて逢う瀬もなかりけり然るに鎮守蔵王大権現の社地か
け落ちて川に入り玉う宮微塵となりにけりされど宝室尊
像は針さき程のいたみなし誠に霊験あらたなる御神と誰
か云はん本郷は乾く間もなき人の袖織りかためたる横岡
も糸はくさりてはづれたりけり帆かけてはしる舟岡はつ
よくゆられて破損する所々によどめる水岡野岸はくづれ
ていつか (ママ)
名にもあわぬ石名坂瓦の如くわれくだけすぐ
れて痛む長岡はわき出る水にをぼれたり又次村の大森は
所々の腰々かけて落つ (ママ)
畑村はいたまぬ畝もなかりけ
り植て根付し寺田村臥して実の入る事もなし又伊勢居地
も大損し掛渡したる橋本はゆるぐ拍子にはづれ落つ沙婆
と冥塗(冥土)の中野村地嶽に堕る人もあり
四日前の三日市残れる家は唯一つ名は立居地でも横にふ
し足はふるいけん百目木はのこらずまろびふしにけり又
樋ノ口もいたみけん竹二本ともなき大竹は割れて細工に
ならざりけり上にのぼりて大飯郷痛みは多く見えにけり
さほど濁らず前川は少しならでは損じなしそれより下の
赤石はわれつくだけつ大損し次の金浦見渡せば残り少く
たをれたり
家は飛村大破損清みかねたりし黒川はつぶれ家多く見え
にけり生ひ茂りたる芹田村半ばの上は損したり
かゝる不思議を三森は三十六軒倒れ伏すゆられて鳴るや
鈴村はいささか残りてからからり又平沢も大痛み御会所
御蔵たをるれば御評議いかゞなるらんと思はぬ人はなか
りけり
しらべ揃わぬ琴浦のこる糸なくきれにけり海と山との両
前寺残れる家は唯三軒室沢村も損失しそれより上に杉山
や崩れて倒る木々もあり院内村の損亡は四十余軒ときこ
えたり
寒き朝かやしも小国十六軒ぞまろびけり此時円通陽山寺
壁堂 (ママ)
堂たちまちに破却して黒泻の泥の中にまみれけり
乗りそこねけん馬場村は十五軒こそ落馬する名はかたけ
れど石田村よそにすぐれて痛みけり根付け堅けん田□は
少しならでは損じなしこゝにもどりて上小国たおれし家
はなけれども畠や田地は大損しかゝるためしは水沢は家
に恙はなけれども田はゆり込んで稲もなし聞もおそろし
天狗平これも同じく損じたり奥に登れば桂坂大損亡と聞
へたり
南は庄内酒田迄北に下りて西目郷小石滝沢本庄までいた
まぬ所はさらになし凡そ此の地震によって死人傷人かぞ
うるいとまあらず騒乱苦毫翰に尽しかたし誠にかくの如
きは沙婆の地獄といつゝ(ママ)
べけんや前代未聞の事どもなり
終り
昭和三十九年十二月仁賀保町畑佐々木清右ェ門写之
出典 新収日本地震史料 続補遺
ページ 454
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 秋田
市区町村 仁賀保【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

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