[未校訂]十八日付
覚
一、江州滋賀郡葛川[息障|そくしょう]明王院は山門無動寺の[別院|べついん]、山
門五千石の内七拾三石寺領御座候処、先年大地震①の節山
萠(崩)れ田畑[亡所|ぼうしょ]ニ罷り成り、[漸|ようや]く諸方の助力ニて
[法会|ほうえ]も相続仕り候所、本堂大破に及び修覆成り難く候ニ
付、近年諸方[勧化|かんげ]致②し、且ツ材木等売り払い、[過半料物|かはんりょうもつ]
も出来仕り候故、改造の御願い申し上げ候処、早速願い
の通り仰せ出され、去年中造り畢り仕り候。然れ共[内陣|ないじん]
荘厳等③并びに[堂供養|どうくよう]の料物も御座無く候て難儀仕り候処、
幸い右建立用木の[末木|すえぎ]共申し請け候[由|よし]願い申し候間、末
木拾五本并びにあてび七本、[甲賀|こうカ]郡山上村④[木挽|こびき]仁兵衛と
申す者買主ニて当二月売り払い申し候。(後略)
〈注〉 ①寛文二年の大地震。②寺院の堂塔建立などを目
的に寄付を募ること。③本尊をまつる内陣の修理。
④甲賀郡[水口|みなくち]町。