地震史料集テキストデータベース
[未校訂]弘化四未年四月
当月十二日当御奉行所江御届申上候私御代官所当分御預所信
州村々去月廿四日夜大地震ニ而建家ゆり潰夥敷死人有之候而
訴出候間為検使手代共差遣見分為□左ニ申上候
私御代官所
信州水内郡上駒沢村
百姓曾兵衛女房
いき
五十六才
（以下四十三人略之）
禅宗法林寺
広享随身
道山
十八才
右同断
同国水内郡金箱村
四人略之
右同断
同国同郡新田村
三人略之
右同断
同国同郡黒川村
東組百姓
武右衛門忰
冨三郎
十三才
以下十九人略之
右同断
同国植科郡杭瀬下村
弐人略之
右同断
同国水内郡黒川村
西組百姓
市郎兵衛
五十六才
以下三人略之
諏訪明神神主
陸奥女房
れい
四十七才
以下廿弐人略之
右同断
同国同郡新井村
九人略之
右同断
同国同郡富竹村
十五人略之
右同断
同国同郡中岩村
八人略之
一向宗西栄寺
純剛
三十四才
同人姉
せと
五十才
右同断
同国同郡栗田村
壱人略之
右同断
同国同郡上町
弐人略之
右曹兵衛女房いさ外百六十五人何も惣身ニ疵所無之着服之儘
銘々居宅ゆり潰梁下又は梁等ニ□（ムシ）打相果罷在候
私御代官所
信州植科郡寂蒔村
喜十郎弟
喜蔵
廿二才
同村
三郎右衛門忰
仁作
十七才
右喜蔵は天窓ニ打腫疵一ケ所有之仁作は右之耳ゟ顔江懸ケ打
腫疵壱ケ所其外惣身疵所無之着服之儘銘々居宅ニ相果罷在候
右同断
同国更級郡今里村
百姓 勝重娘
みつ
十五才
右惣身ニ疵所無之服之儘右同様
右同断
同国水内郡荒木村
浄土宗蓮心寺
住持
白錞
四十三才
右腹ニ打腫疵壱ケ所有之外惣身ニ疵所無之着腹（ママ）之儘蓮心寺庫
裏ニ相果罷在候
当分御預り所
同国高井郡小菅村
名主 和助
五十六才
百姓 藤吉
三十三才
右同断
同郡内山村
名主 勝右衛門
五十八才
右同断
同国（ママ）南鴨ヶ原村
寅吉
四十弐才
右何も惣身疵所無之着服之儘右同様
右同断同国（ママ）前坂村
百姓 八郎兵衛女房
いゑ
五十三才
右同断
同国稲荷村
百姓 六右衛門
八十一才
右同断
同国高井郡和栗村
百姓 増右衛門
七十三才
同 市郎次
二十四才
同 安吉
十四才
右同断
同国野深村
百姓 安兵衛母
きよ
七十三才
右いゑ六右衛門増右衛門市郎次は背中所々打腫有之安吉きよ
ハ天窓打疵有之其外惣身疵所無之着服之儘右同様
右同断
同国水内郡青倉村
太郎兵衛後家
はつ
七十六才
右同断
同国高井郡笹津村
林右衛門女房
ちよ
三十三才
国人娘
いゑ
三才
同人妻
しか
十九才
右何も惣身疵所無之着服之儘溺死
居宅焼失跡土中ゟ掘出し有之候
右同断
同国高井郡笠沢村
百姓 林右衛門忰
惣吉
七才
同断
三代吉
三才
同人娘
りき
廿九才
右同断
同郡野沢村
百姓 巳之助
右惣吉外三人溺死致候へ共死骸相知不申候
弐拾弐人
右見分吟味為仕候処去月廿四日夜四ツ時頃稀成大地震ニ付打
驚き銘々居宅立去可申と一同周章立騒候へとも如何ニも震強
動歩行難相成漸外江駈出し候者も有之又は其間も無之潰家ニ
相成暫相立少々静ニ相成候後梁壁等之下ゟ疵請漸々這出し候
者も有之残り候処銘々家内人数不残中ニは潰家之下ニ而助呉
候様呼候ものも有之候間屋根を切破梁木下より救出し怪我は
有之候得共助命致候ものも夥敷有之次第ニ而書面之上駒沢村
曾兵衛女房いき外百六拾六人は梁壁等ニ強く被打追々引出候
へ共最早絶命罷在寂蒔村喜蔵外壱人は近村松平伊賀守殿領分
同国同郡稲荷山村縁先方ニ罷越逗留罷在今里村勝重娘みつ儀
右同領分岡田村懇意之者方江逗留差遣置候間一同安否無覚束
銘々駈付候処何も潰家ニ相成漸引出候処存命罷在候間早速連
帰り療治差加候得共養生不相叶翌廿五日相果候儀ニ而荒木村
蓮心寺住職白淳儀は善光寺西法寺江法用ニ付罷越居候処右同
様庫裏ゆり潰候節怪我致候旨為知来候間早速引取療治いたし
候得共養生不相叶去月廿七日相果候儀ニ而小菅村名主和助外
三人は去月廿二日私役所江罷出帰村之節同廿四日本多豊後守
殿城下飯山町旅籠屋庄兵衛方江止宿致候処右同様潰家ニ而相
倒候付梁木取迄（カ）候処追々連帰り手当申付候得共養生不相叶相
果前坂村八郎兵衛女房いゑ外五人は善光寺江参詣致罷在大地
震ニ付安否無覚束存銘々身寄之者同町ゟ罷越候処旅籠屋仁右
衛門方江止宿致潰家ニ相成怪我いたし漸野田ゟ這出し罷在候
と見当連帰種々療養致候得共養生不相叶同廿九日相果候ニ付
其段先方町役人江相断置候儀ニ而青倉村友三郎後家はつ外七
人儀はつハ右地震ニ而村内青倉川筋川上ニ而山抜有之泥水押
出し居宅流失致同人行衛不相知候付最寄を相尋土中ゟ死骸掘
出し百姓林右衛門女房くよ外弐人は同郡小菅村地内溜池堤ゆ
り崩し水押出笹沢村は出水ニ而村内一円満水致候節居宅流失
溺死致候ニ付死骸見当り引上候処右林右衛門忰惣吉外三人は
行衛不相知全溺死致候儀ニ有之所々手配致し精々相尋候得共
死骸見当り不申候千曲川通江流出候□哉又は土中江埋候哉も
難計儀ニ而全天災難逃潰家ニ而被打又怪我致し流水家溺死等
相違無之銘々死骸片付之儀相願候而申立親類組合村役人共江
も相糺候処一同申合候付外怪敷儀も無御座候間夫々死骸取置
候様於場所申渡候段検使之手代申付候依之御届申上候 以上
未四月廿日 川上金五郎（ママ）印