地震史料集テキストデータベース

[未校訂]安政二年乙卯　御年十六歳
一正月十五日　御家中末々まで仰出されの条①
（注）①御書付左の通り
先達而大地震に付田近栗太郎、井上宗三郎出府、委細被
遊御承知候処、御城内の儀は増々被遊御歎息候。乍此上
御城外郡町に至り候ては先軽方に被遊御考一統為差怪我
人等も無之此段は御太慶思召候。然る処右様不容易事に
付而は速に御暇御願被遊御帰城夫々御下知成下度処此度
の天災諸国一統の事にて御領内の義は先づ中分の処と被
遊御考候得ば御内願被遊候ても此方様斗御聴済の義は御
六ケ敷可被為在思召候得共早速御用番松平和泉守様公用
人江御内談被遊候処、右の御次第殊に当年は御参府御順
年にも被為在候得ば御暇年の御方様御同様の訳に不被為
在、御出来相成間敷趣申上候旨乍去此上御並方も被為在
候はゞ重て御歎願被遊度思召候。然に江戸表の御振合も
遠境の事旁委敷不相分彼是申唱候義も可有之の旨被遊御
懸念候将又地震後早速一統より人力差出し殊に御家中の
面々自身御取片付等も致し候趣、逐一被遊御承知実に右
程之心入有之義全く御代々様の御高徳と深く御満足思召
候。尤御住居向の義は差急御手宛に不及譬へ被遊御帰城
候共其辺にて聊御差支不相成候間銘々雨露を相凌候様手
宛専一に思召候旨御沙汰に候
旧臘十九日御賞詞を蒙らるに付、御家中へ仰せ出され
し書左の通
此度御家中文武の儀且武備御手宛等の義に付安部伊勢守
様より被為蒙御沙汰委細今日相達候通に候処、右は兼々
芸道御引立の御趣意一統相心得致稽古候故と御賞詞も被
為在候義と御大慶に思召候。就ては以後の義猶更右の御
趣意に振れ不申様実意に可致執行候。将又武備の手宛の
義は夫々不任心底義も可有之候得共、成否は銘々心掛の
浅深にも有之候得共此上精々質素を用ひ聊にても致用立
万一時変に臨、先祖の勲功をも不汚候様有之候得ば忠孝
も相立且当今の御取締の御主意にも相叶候条此段得と致
勘弁心得違無之様誠実心掛可申旨被仰出候事
安政五年戊午　御年十九歳
一十月十五日　御家老始小普請②
（注）②厚き御沙汰の御趣意拝承不仕候者有之候節は如何
に付御用人御次に控罷在退散の節、左の御書付相
渡す
去る寅年大地震御城中就中御本丸御大破の処石垣御普請
石引御加勢御家中始末にまで数日罷出尚又此節御城中石
垣御普請にも石引御加勢罷出、御本丸御普請以来働粉骨
不容易御為筋に相成御満足被遊候。依之如何様と被御賞
誉筋茂可被成下被思召候得共多人数の事にも有之其義不
被為届何共御不本意に被思召候。然山下御茶屋御貸渡可
被成下候間、同所に罷出、銘々得意之業勝手次第打くつ
ろぎ相楽御酒頂戴可仕様被仰出候