地震史料集テキストデータベース
[未校訂]十一月四日 朝五ツ時過地震夜九ツ時過又震
両度とも覚へす庭上ニかけ出て蹲踞せし程なり
五日夕七ツ時最大震西南ニあたりて大砲を連発するか如きす
さましき声あり
此声何れ之地方ニても同し方角ニ聞ゆと云、此時家屋崩れ海
近き地ハ大地折て沙水涌出死人怪我人有之、市中所々出火有
之候得共無程鎮火、夜九ツ時分又大震尤夜中小震度数不知、
依之今夕より士民とも庭上或ハ街衢田園ニ露宿す、此月十一
二日頃より追々宅ニ帰り入る
四日以後朝汐之度常ならす昼夜とも屡（屢）急ニさし引す、明年
ニ至て常ニ復す、又七日八日頃急ニ高汐来るへしと云訛言
有之婦女子なと大ニ怖たり、○六日暁以後昼夜とも度々震
七日朝大震、其後昼夜度々震、十六日・十七日稀なる烈風
其中ニも小震数度、其後昼夜中小震、廿五日風雨、暁より
大地鳴動数次雷鳴二度其後も日夜中小震、十二月十日・十
四日・晦日大震、其後追々度数減したれとも翌卯年より辰
年ニ至り度々震然れとも大震ハ無之辰年秋林ニ至て全く常
ニ復す、○此度之地震ニ付破損所等 公儀へ御届左之通
一高松城天守櫓屋根瓦落壁損申候 一本丸之内一重櫓一ケ所
転懸申候 一多門一ケ所転懸申候其外余程ひツミ屋根壁大破
仕候 一三之丸大手西南角櫓下石垣崩申候 一城内并南大手
石垣懸塀とも所々崩申候 一城内潰家十二軒此外二三之丸建
家大破仕候 一潰家二千九百六十一軒内百六十九軒家中・千
四百九十七軒町・千二百九十五軒郷中 一家中大破家二百三
軒 一焼失家四軒 一潰土蔵五十五ケ所 一大破土蔵百ケ所
一川口番所三ケ所大破仕候 一塩溜坪五百十二崩申候 一塩
浜石垣三千七百六十九間崩申候 一汐除堤七千二百二十六間
大破仕候 一川除堤六千四百五十六間崩申候 一椻四百九十
一ケ所崩申候 一池堤崩七ケ所田畑損申候 一池堤二百六十
四ケ所大破仕候 一橋八ケ所落申候 一道橋百四十八ケ所大
破仕候 一死人五人内男三人・女二人一怪我人十九人内男九
人・女十人 一怪我牛馬三匹内牛二匹・馬一匹以上○御家中
居宅破損之面々并町郷中潰家之者共へ御救米銀被下猶又御家
中へハ居宅修理之為別ニ御貸銀も被成下候○四日朝之地震ハ
東西とも諸国大抵同様、五日夕以後之大震ハ上方筋南海道甚
しく海辺所々津浪有之就中土佐・阿波の両国ハ震後大津波ニ
て死人無算なりしと云