地震史料集テキストデータベース
[未校訂]安政二卯十月二日之夜四ツ過会津ニテ
地震余程強候処、江戸ハ大地震ニ付被仰出
十月五日江戸より早打着
十月五日申渡覚 諸月番
当二日之夜江戸大地震ニて
御城中所々破損并上御屋敷御焼失ニ付、敏姫様西御丸下広
場え御立退被遊、照姫様ニハ御庭え御立退被遊、御別条不
被成御座候段早打ニて申来候、此旨被得其意 仲ケ間并組
支配えも可被申聞候
但
少将様江ハ独礼以上 御機嫌相伺候
上々様え大目付格大組物頭以上御□書 御機嫌可被相伺候
右ニ付此日早速御使番杉田勝次郎・小川主膳・奥番笹原源
之助追々早打ニて江戸へ出張、夫より追々早飛脚往返甚し
く
此夜御普請方支配之大工共拾人出張
六日御普請奉行藤沢六郎右衛門・小奉行堀清左衛門・小役
人竹林新蔵其御大工并下役共出張、蜷川巳津之助・鈴木宗
吾、御借金為御用大坂え出張、八日簗瀬三左衛門殿出張
十三日玉木左右衛門・八嶋半助御借金為御用長崎え出張
御手当御屋敷内六両 格役以上五両
二ノ壱合以上四両 紐制以上三両
甲賀格以下弐両
十月廿日申渡覚 諸月番
上向御屋敷御類焼ニ付、為御尋御奉書
宿次を以て到来、結構成御儀恐悦可被存候
右之趣仲ケ間并組支配えも可被申聞事
但独礼以上御祝義可被申上事
昨二日之夜四ツ頃ニも可有候哉、大地震上向屋敷不残炎
上、芝御屋敷十六七棟潰、其余不残大破、住居不相成、小
屋懸住之外有之間敷、先ツ以上々様御無事恐悦奉存候、家
内無事荒川両家無事候へとも、身を全致候迄ニて助り候、
芝前町迄焼候得とも御屋敷類焼不相成、諸道具こわれ候迄
ニて相済、御屋敷廻り土塀不残頽れ、あばらやに相成、江
戸中の義ニて囲之致方も無之、幕張り紙張外無之候得と
も、御蔵々無残大破中ニハ潰候御蔵も有之、幕出候事も不
相成、御姫様方幕張ニて御野宿之御振合、明方ハ敏姫様ハ
三田え被為入、照姫様ニハ芝新御殿御住居ニ相成可申、右
明キ御殿御座候間之外不残潰、堀七太夫殿・水野殿無事、
何れも立候儘ニて丸焼ニ御座候、三田金杉ハ潰無之、土塀
ハ頽候由、深川御屋敷之左右ハ不相分、上御屋敷死人数不
知、格役以上ニてハ高津久左衛門不見由、格役以下屋込之
所死人大勢ニて名前も不相分、芝ニてハ死人軽（ママ）々之方計拾
五人程有之、其後怪我人数不知、三田金杉ハ死人怪我人無
之由、前代未聞之事ニ御座候
十月三日七ツ時出ス 芝詰より
前略ス、二日之夜陳将隊嶋当番ニ有之只三郎彼地ニ罷立、
築嶋五ツ之内御家持所二ノ嶋計り大変ニて、兼て堅固之心
得罷在弐拾五間之居小屋番所只是ゆりニ潰れ、暫時ニもへ
上り、中々手出もならず事之由、只三郎義至極危命助り、
組頭土屋を押出し全く相助ケ候とて省吾家内大悦厚礼詞申
候、相番ハ田原平角・木村森之丞・大野四郎五郎・野村尚
之進・佐藤四郎左衛門・藤沢茂助・大野英馬・小野田平太
夫・佐々木只三郎・柴山寅吉・組頭土屋省吾・物頭相馬
繫、右之内田原・大野年丈ケハ相後れ押潰され、又寄合組
中村伝蔵并二男清馬・黒田安太郎・安藤萩右衛門伜勇・医
師斎藤玄静伜玄寿・足軽小頭足軽弐人、小人壱人、小使親
子弐人、以上拾五人潰焼死、かゝる焼死有之候ても何分手
出もならす、是ハ二ケ所火薬蔵ニ被入置候火薬三千貫目程
有之候得ハ中々難近寄候、為更代仲ケ間罷越家来も罷越候
故、当番之人々乗船致退キ番船之様ニテ夜を明く、扨又金
杉御陣屋之振合ハ朝出之後ハ前通りえ品物等取集一家ニて
かたまり居候得ハ、八ツ時以前ニも可有之哉、火元見の鳶
罷帰り触候ハ、松平下総守様御屋敷焼上り候ト申、小声ニ
テ実ハ御家様大変ト申候ニテ、又々諸人肝を潰し申候、其
以前火事之様子ハ北ニ当り、場広焼上り候と見る内、所々
焼出し、北より東江懸ケ深川之はて迄一面ニ天赤く、何と
も可申様無之候処江上向両御屋敷潰れ焼候由、両御姫様御
立退御安泰之由ニて恐悦ニ奉存候上、両御屋敷ハ言語ニ絶
候次第ニて、御宝蔵始焼野原ト成、御物見候処少々残、両
御屋敷ニて百三十人余死人之由ニ候へとも追々相増候由、
芝ニてハ大凡三十人計ト申候得とも聢トハ不相分、芝ハ三
四分□潰候へとも、不焼ニ付死人少キ候、深川御屋敷御米
蔵ハ別条無之由、今以て毎日ゆり候ニ付外へ出張居申候、
以下条々略ス
金杉
十月六日之夜 佐々木源八
御屋敷内江御手当
五拾両御家居内ニ而潰候上焼候者江
拾弐両 同潰候者
弐拾五両 同類焼之者江
四拾両格役以上ニて潰候上焼候者江
弐拾両 同類焼之者江
拾両 同潰候者
三拾両二ノ寄合ニて潰候上焼候者 拾五両同類焼之者
七両弐分同潰候者
弐拾弐両独礼ニて潰候上焼候者 拾壱両 同類焼之者
五両弐分同潰候者
拾七両潰候上焼候者 八両弐分類焼之者
四両壱分潰候者
右ハ御通以下紐制迄
拾両潰候上焼候者 五両類焼之者
弐両弐分潰候者
右ハ甲賀格以下軽々
一勤番之者ハ右之半数御手当
一不潰不焼者えも御手当被成下
一地震ニて所々御屋敷御一統骨折候ニ付労酒被下候旨
一此度天災ニ付築嶋御屋敷ニて死亡之者共格別ニ相葬候、□
々相応之香典御仕向被下、夫々回向被下成候、尤築嶋ニて
死亡之者共ハ御場所柄別段之義ニ付御軍事奉行被遣拝礼被
仰付筈ニ候
但日並之義ハ御目付え対談候様
十一月十八日十九日
回向有之候事
回向料
一三分ツゝ外様士壱人
一弐分弐朱ツゝ寄合組ニて壱人
松平肥後守参勤時節之儀、前格四月中参府仕候様被仰出候
処、此度地震ニて居屋敷相潰候上焼失仕、外屋敷迄も同様
相潰又ハ及大破、更ニ居所無御座、尤兼て勝手向不如意之
処益難渋ニ至り、何分早速之普請も行及兼候間、何卒来八
月中参府仕度志願ニ御座候処相願候ても不苦義仕合御座候
哉、此段御内慮相伺候様肥後守申付越候 以上
十月十八日 堀七太夫
御付札
来年八月迄御参府御猶予之儀相願候心を以て、表立月番
江被相願候様可仕候事
拙者参勤時節儀前様四月中致参府候様被仰出候処、此度地
震ニて居屋敷相潰候上焼失仕外屋敷迄も同様相潰又ハ及大
破更居所無御座、尤兼て勝手向不如意之処益難渋ニ至り、
何分早速ニ普請も行及兼候間、何卒来年八月迄参府御猶予
被成下候様仕度此段奉願候 以上
十一月朔日 松平肥後守
御付札ニて久世大和守様より翌二日御差図、願之通来八月
迄参府猶予被成下候
十一月朔日諸月番ニて三ケ年之間□□ 義被仰出略ス
十一月七日申渡覚 大御目付格
大組物頭 以上
御参勤之儀前格四月中ニ候処、此度地震ニて御屋敷相潰候
上焼失ニ付、来八月迄御猶予被成度旨御願出被差出候処、
久世大和守様より可為御願之通旨御付札を以当二日御差図
相済候由従江戸申来候、恐悦可被存候、此旨被致承知、仲
間并組支配えも可被申聞候
但小将様え独礼以上御祝義可被申上候事
同九日此度非常之御省略被仰出、面扶持同様之心得を以御
箇条之内をも尚又打続候様被仰出候ニ付てハ、登城日減候
得ハ、以下々々迄透を得、労費相省候儀ニ候間、御年限中
左之日並之通皆共登城致候様被仰出候事
朔日 四日 六日 十二日 十五日 十七日 廿日 廿
五日 廿八日 以上
江戸三御屋敷ニて死人
上御屋敷死人
御普請奉行
高藤久左衛門并母二人
御用所密事
田谷治八妻壱人
御広間帳付席御用懸次
山本平治伜壱人
御賄所小役人
岸幸助壱人
中奥
御末弐人 同下女壱人
御光間附人
福田辰之進
大組部屋 足軽北番詰
棚本宗蔵 高吉平蔵
足軽同
松川 新八
足軽三十人部屋 同南番詰
下山友之助 鈴木房之丞
同
鈴木豊之助
同
永井 伝六
御中間
八助
同
助三郎
同
品三郎 夫丸二人外ニ壱人不見
御厩之者母小人二人
御普請方小使壱人
御馬拾壱匹不残
向御屋敷死人
御賄頭
矢村源四郎并孫共弐人
御用所役人
山田貞助夫婦 子供四人不残
御用人所吟味役
寺田閑助夫婦 子供家内四人不残
御用所密事
根元新助二男壱人
御用人所吟味役
舟橋弾六并兄ノ妻共ニ弐人
御用聞番物書独礼
石川英蔵忰娵弐人
御用人物書
細谷泰助妻伜子供三人
大賄役
成瀬善左衛門伜下女弐人
御賄役人
川村半太夫夫婦弐人
御用人物書
川村勝之進夫婦子供六人不残
小奉行
神田幸左衛門夫婦二人
御側医格
吉岡昌玄伯母子供六人
御料理人
斎藤兼助妻壱人
御北納戸坊主
加藤新治子供二人
御普請方手代
金子久蔵姪壱人
御錠口番
山口昌吾家内五人
御普請方才判
渡部一八夫婦子供四人不残
辻番小頭
石川甚助親子二人
足軽
鈴木儀三郎妻娘二人
同
羽生善次郎夫婦夫婦家内不残
御徒目付
村岡利兵衛妻壱人
御月額番
花見弥助夫婦 子供家内五人不残
御賄役人
寺田藤兵衛末子壱人
御聞番物書
桑名由蔵母壱人
御書番物書
山田清兵衛母伜共ニ弐人
与力
松見佐と美壱人
御料理人
岩田音五郎子供二人
御台所家具役
外嶋吉五郎子供二人
御勘定所定番
石塚鉄松子供三人
御普請方手代
松井作次郎家内四人不残
御勘定所御買物役
鈴木鎌太郎伜壱人
足軽
斎藤栄次郎子壱人
同
大曲弥市妻子共三人
同
斎藤亀吉親子二人
同
悪ママ原鉄之助養子壱人
御用人
荒川善蔵殿家来壱人 馬場与治右衛門
家来壱人
芝御屋敷
敏姫様御附物書
野田清治娘壱人
御錠口番
高橋安之助娘壱人
定火消小頭
田嶋権次郎壱人
御大工
田辺左吉壱人
足軽 足軽
上野勝治妻壱人 佐藤嘉蔵妻壱人
同
湧井定吉壱人
御手廻り
伊達新作妻娘弐人
御手廻り
大竹利右衛門妻子二人
同
吉兵衛壱人
同
仙助娘壱人
御中間
吉蔵妻子二人
御中門
久助父壱人 浅井完平家来壱人
夫丸弐人
芝御屋敷より上御屋敷江来居候者
御坊主
小松宗伯壱人
与力
安藤孫治母壱人
御坊主三田より上御屋敷当番
草刈春作
嶋御台場当番死人
組士
田原平角
同
大西四郎五郎
寄合組
黒田安太郎
寄合組
中村伝蔵
伝蔵伜
同清馬
寄合組萩右衛門伜
安藤勇
御医師御雇
斎藤玄寿
柴佐多蔵小頭
五十嵐三郎
足軽
吉野善八
足軽
大田五郎次郎
御水主
林鉄蔵
御水主
石井仙之助
小使糀町より出勤の者
米屋富蔵
小使糀町より出勤の者
同忰熊吉 小者伝三郎
芝御屋敷死人別書ニ有之
御広間張付
小町屋庄蔵夫婦 鹿野大助妻
嶋田伴蔵家族 斎藤武右衛門娘
小沼久治郎 斎藤覚助妻 前ニ兼助トアリ
郡代同心小頭共ニ六人
（注、原文乱れ、前の一行どこに続くか不明）
芝御屋敷潰家之覚
一角田安之助並一棟 一小松長八同
一組御長屋同 一御中間御長屋同
一御厩東之方七八分 一御普請方役所三棟
一素読所元平法場樋口良之助住居
一新建之□場一棟 一更代部屋半棟
一明御殿御客座敷 一東西共下宿
一表門 一御社御拝殿 一南辻番所
一横堀向土蔵一棟 一外廻り練塀土塀不残
一表御長屋御門より北之方
一庇不残南之方抜落 一武井善右衛門并治左衛門住居迄
一夫丸部屋壱棟 一御春屋 一御庭之内兵器蔵弐棟
一中廻り番所 一表御門御土蔵壱棟 一御庭番所
一冨士見御茶屋 一武具役所 一三ツ蔵役所 一西御物見
右之通り
右之外御土蔵御長屋共大破ニ相成申候、委細ハ猶取調可申上
候 以上
十月三日
御徒目付
小奉行
十二月五日会津勝手被仰付候人別
五拾石同格会津
勝手無役 中沢主膳
御勘定頭
当務之儘 遠藤源内
御蔵入御勘定頭
当務之儘 鈴木佐兵衛
御小姓
当務之儘 北原丹治
同
同 黒河内総之助
御供番
同 永田又助
御勘定役
当務之儘 山本丈右衛門
同
同 香津惣右衛門
御勘定所小役人
同 安田嘉平治
御用人
当務之儘 水野清兵衛
御用所役人
当務之儘 荒川関治
御用所
当務之儘 古山平左
御小姓
同 小室金吾
御供番
当務之儘 吉村藤之進
同
同 荒木勝治
御勘定役 上野宗兵衛
同
御勘定所役人
同 河原田新治
同
同 日下清之進
同
同 窪田伴治
御台所頭
当務之儘 大塚宗右衛門
御徒目付
同 村岡利兵衛
同
同 戸枝英三郎
同
同 棚木善五郎
御料人
同 岩田音五郎
同下役
同 光岡岩次郎
御北納戸 小川喜円
割場無役 長谷川直助
御錠口番 高橋安之助
御庭方 小室伊右衛門
御庭方 須田甚吾
御舟方
割場役人 山口雄右衛門
同
同 加須屋類三郎
同
同 井上三九郎
御広間帳付会津勝手寄合組
山本平治
御役目付
当務之儘 磯貝源治
同
同 江川一郎
御通行役
与力 野田情治
御料理人
同当務之儘 増子庄吾
御小納戸 桜井新清
同 日下久蔵
割場無役 角田安之助
武具役所附
当務之儘 古川新之助
御庭方 小搓山惣右衛門
同 遠藤幸八
御舟方
割場役人 小沼与八郎
同
同 林好右衛門
同
同 三浦貞治郎