地震史料集テキストデータベース

[未校訂]（嘉永六年）三月十二日中泉代官林伊太郎書状　某宛
（前略）
尾張殿（徳川慶勝、名古屋藩主）一昨日十日なり日阪宿（遠江佐野郡）御休、見附宿（同磐田郡）御旅館、十一日
舞阪（同敷知郡）御休、白須賀（同浜名郡）御旅館、右四駅とも私支配所ニ付、手附
手代為取締差出候ハ勿論ニ候得共、内密御様子風聞迄も為
相探候処、御飲食・御衣服ゟ都而之御行状悉く御別段之趣、
既ニ三度之御膳部ニ麦飯御用と申ス事、右ニ付自然臣下迄
も先前ゟ振合宜よし、実ハ私当地著以来別而質素倹約可相
守と、麦飯等は勿論、一切麁食麁服、好物之酒も相止メ、
唯御用向而已ニ打掛り一ケ年相立、其上ニ而手附手代共へ
も倹約筋申渡し、禁酒等ハ不申付候得共、万事相慎候様為
致置候処、近来は無拠慎候様ニは候得共、唯厳重過キ候様
ニ而已存候哉ニも相聞候間、当春（嘉永六年二月二日）は地震ニ付、出精之廉旁
一統へ手当相増、且私ハ飲不申候得共、庭桜開候節下々迄
へも吸物差遣シ、唐茶十分為相用候処、　一同欣躍和楽いた
し、漸く三ケ年目、右ニ而厳重之申付も少し心中ゟ相守候
哉之事、聊之人数ニ而サへ令ノ行ハレ候事甚六敷もの、是
ハ全く未熟之私ゆへ之事、可愧々々、然ル処尾公なとかく
御行届と申ス義、感服至極、理有事ニ御坐候、是も定メテ
左右よき輔ゆへ之事か、又は水老公之御仕込歟（徳川斉昭、前水戸藩主）と存し候（後
略）