[未校訂]安政三年の地震と津浪
(新渡戸伝一生記三)
安政三年(一八五六)七月廿三日大地震にて諸方地裂け
家・蔵倒れ申候、[中掫|チウセリ]宿忠兵衛宅さほどこれなく候、十
次郎野辺地に罷在り御台場を築き立居り申候ゆへ、見舞
に使遣し候処、海岸故か七戸よりは強き様子申来り候、
引つゞき日々地震これあり、八戸より市川辺津浪にて潰
レ家も諸所これある由
(利剛公御在府、御留守留)(注、省略)
(水害雑記)
旧南部藩内安政の大地震
一安政三年七月廿三日午の刻地震強くして八月初旬の頃
までは昼夜幾度と云ふ限りもなく、既に十度以上強弱
震ひしが、段々数も減じ薄く成て鎮と雖、頓て昼夜の
内には両三度づゝも九月中旬迄も有之、後には至てか
すかに地ゆるぎして心を付ざれば不知して済程にて
有之、海岸筋の津浪並奥筋に懸て大に痛有之、其節
の勤番御代官より非番の代官迄の文書夥しく、其被害
の状況及び庶民の訴向を報じ来る、依て藩より夫々被
害の程度により救米下賜等有之