地震史料集テキストデータベース

[未校訂]（享保二十卯三月御朱印御願）
一右御願之儀前々も宿中打寄相談仕罷有候処新居宿之儀
海辺近く住居仕候故節々高潮入り或は大浪に逢其上住居
不成場所ニ付御願申上、三十五年以前所替仕又候弐拾九
年以前大地震津浪以後所替仕、無間も両度之引越に而一
宿難相立体ニ悉困窮仕候改、御願一年々被延引ニ罷成申
候、併白須賀宿神主江被下置候御例も御座候様に奉存
候、其上同国天竜池田村古来之者共も　天正の御時代奉
御奉公仕候為御褒美新居宿御同様之文言に而御判物被為
下置、今以奉所持渡シ役相勤罷在候御儀に御座候得ば新
居宿之儀、此度御判物御下ケ被為下置候様に御慈悲奉願
上候
（中略）
享保二十年卯三月
遠州新居宿船守役人代　作右衛門
船守船頭頭　久右衛門
船守頭　九郎左衛門
御奉行様
乍恐願書を以申上候
一十月四日大地震艮（ママ、うしとら）刻津浪打、家数弐百四拾余流失、百軒
余打ツぶし申候、惣て新居町之儀地ひきに有之、殊に三
方海に而少々の風雨浪荒にも家居損じ難儀仕候所、前々
ゟ向中浜地高に而、御田地も有之程に御座候而、此所荒
海ゟ之かこいに罷成少宛之潮入候儀ハ難儀仕迄ニ而御座
候、所々此度の津浪に而向中浜地形打崩し、田地も亡所
に罷成り中浜大分欠込、前々は幅六町程も有之候処に漸
弐町ニ罷成、其上浜地形打崩し地ひきニ罷成、此以後少
の浪荒にも新居町浪除囲ニ不罷成、左候ハ荒海ゟ直に浪
打かけ候而ハ危儀ニ御座候、第一今切湊口大分新居の方
江切れ込広罷成申候
一新居町東西の入口打切、只今船ニ而渡四方海ニ罷成、潮の
指引強く当分の住居も難仕足弱の者共は在郷へ当分預ケ
置候程の仕合ニ御座候、依之当分ゟ御役等難勤ク奉存候
一今切渡海場近年悪敷罷成、夫故御泊休も無御座候処に、
又候此度の津浪に而新居町の儀、向後ハ軽き旅人迄も泊
休は御座有間敷、弥困窮可仕と奉存候、右之通今程は四
方海に而新居町は島の様ニ罷成候故、所之者共当分ゟ危
奉存候得ハ、往還之御衆中少之御休も難被成儀ニ御座候、
依之地高成所江引越の儀奉願候、場所も見立申候所ニ新
居近所松平式部少輔様御領知内山村と申す所へ引越被為
仰付候得ハ、第一渡海之ため往還筋も如何様ニも致能儀
ニ相見江申候此所ニ米津周防守様、牧野大学様領入合之
中野郷田所も御座候、内山村の内にも牧野大学領知少々
御座候、追而御下知次第絵図等認差上可申候
一新居町之儀元来困窮仕候所、此度引越奉願候儀、人々年
久敷住居仕引越候儀、当分ハ難儀至極ニ御座候得共危所
迷惑ニ奉存候、如此御座候、願之通被為仰付被下候様御
慈悲奉願候
一地高成所江引越候ハゝ御役等勤リ能、御泊休も可有御座
候并猟場之かせぎさわりも無御座候、廻船の出入さわり
無御座候、左候得は連々ハ弥以相続可仕候右
之通御慈悲奉願上候　以上
宝永四年亥十一月
遠州新居宿問屋　九郎左衛門
年寄　八郎兵衛
同　市三郎
同　六郎右衛門
同　武右衛門
組頭　勘右衛門
同　市郎左衛門
同　次五右衛門
船頭頭　次郎右衛門
同　六郎兵衛
同　弥次兵衛
同　九郎次郎
同　佐右衛門
同　小左衛門
役人代　市左衛門
同　権兵衛
同　兵九郎
御奉行様