[未校訂](富士山麓の巻)
横割八幡宮
下横割・十兵衛両区の氏神として下横割に鎮座するこの社
には、宝永六年(一七〇九)に記された由緒書がある。
それには……
(中略)
昔から、此地だけは飢饉、疫病のなげきを受けず、火難水
難もなく又度々津波で隣郷の民家は波にさらわれ田畑も荒
らされたが、ここ丈けはそうした事がなかったのは全く神
霊の加護とされている。
ことに宝永四年(一七〇七)十月四日五日の大地震に、隣
郷残らず家屋はつぶれ、人馬にも被害があったが、当村は
人家一軒もつぶれず、怪我人もなかった又同年十一月二十
三日から十二月九日まで、富士山焼け立ち震動雷電やむ時
なく、富士山は焼け削れ、村里は忽ち大地の底に埋められ
るかと思い、氏子一同このお宮に祈願したところ、石砂も
降らず、十七日間にして静穏になったので村民一同は神徳
のあらたかな事をつくづくありがたく思った……と記して
あった。