地震史料集テキストデータベース
[未校訂]七月十九辛巳日 陰晴、午ノ中刻過風雨甚則刻止 西之浜
小泊辺迄津浪
（七月廿日の条）
一金井ケ沢湊目付長谷川理助申立候は、今十八日之夜海津
浪ニ而同所湊御番所潰申候、御見分可被仰付哉之旨作右
衛門江達之見分申付旨書付ニ而勘定奉行江申遣之見分之
義は作事奉行江も（ママ）
一赤石組代官申立候は晴山村・田野沢村・嶋村・鴨村・金
井ケ沢村・関村・柳田村・桜沢村・赤石村右九ヶ村ニ而
今十八日之夜海津浪押シ上家五六拾押シ潰申候、金井ヶ
沢湊御番所押シ潰申候、右村々之内ニ而人拾四五人馬茂
死申候旨作右衛門江達之、死人等夫々見分之上片付候様
申付之見分目付之義大目付江も申遣之
一鰺ケ沢湊目付申立候は今十八日磯津浪松前舟三艘破船仕
候、其外舟少々痛申候得共乗人痛無御座候旨作右衛門江
達之
一赤石組・金木組津浪之由注進付作右衛門達之為見分赤石
組江成田伝八・金木組江は菊地十蔵罷下候様申付之
一金木組代官申立候は小泊村今十九日明六時より大津浪村
中大概五六拾軒程押潰申候、人馬も多怪家御座候
一懸（カ）船・漁船・小廻等茂多痛損御座候
一村近所塩釜不残潰申候
一四方大分痛損御座候
右之通御座候得共其辺品員数相改候無御座候付先御断申
上候旨作右衛門江達之
一鰺ケ沢町奉行申立候は今十九日磯津浪ニ而御船屋痛損申
候
一旅小船三艘破船仕候、其外地舟共ニ上廻リ損申候乗人別
条無御座候
一当年五歳子共壱人流失申候、右之通申出候付作右衛門江
達之
（七月廿四日の条）
一赤石組代官申立候は
一流死男壱人 万太郎
金井ケ沢村茂右衛門子
右者当月十九日大浪ニ而右村々ニ而流死拾三人有之内右
万太郎死骸上リ、長内次右衛門去ル廿二日見分相済片付
申候、残拾弐人死骸上リ次第御断可申上候間其節御見分
被仰付度旨作右衛門江達之
一今別町年寄小鹿喜右衛門申立候は、去ル十九日明七半時
松前御城下枝ケ崎町より下町不残流失仕候由尤舟ハ海陸
ニ而夥々敷痛潰れ申候由、人は岡ニ而三拾人・舟ニ而拾
人死申候由
一餌差（ママ）よ町り御城下江廿日之夜飛脚到来付左之通申参候由
承申候
一餌差町江寄せ候津浪十八日之夜八ツ時ニ而同町跡先流失
仕候、死人は夥々敷候得共人数は何百人と申義碇と相知
兼候由
一餌差湊ニ而舟百弐拾艘居候処百五艘は潰れ拾五艘残り申
候由、尤相果候人弐百余人御座候由
一熊石村辺在々小村不残流失ニ而残候家弐拾軒・人三拾人
残リ申候由、其外死候人凡九百余人と承申候
一御城下より下は吉岡、上は餌差町迄相知候由、其より下
は尻内・亀田・箱館迄之内未善悪之様子相知不申由、大
方人数凡四千余人相果候由、右は志摩守様御手船之舟頭
山田清七と申者御舟も此度津浪ニ而痛損候由付、三馬屋
江舟雇罷越申候由ニ而昨廿一日渡海仕候付私方より手代
遣前書之通承候間、右之段御注進申上候旨申出之作右衛
門江達之
一御馬廻工藤吉右衛門申立候は
一地船大小四拾四艘丸木船天当船共ニ破船仕候
一九人乗 舟頭 藤右衛門
中物諸材木積入
右船水主之内源太郎と申者壱人流死尤死骸上リ申候
一八人乗 舟頭相渡 源七郎
右船名（水カ）之主内弥平次・甚九郎と申弐人流死尤上リ申候
一六人乗 右同 伊兵衛
右水主之内仁兵衛・六平弐人流死尤仁兵衛死骸上リ申候
一五人乗 右同 権左右衛門
右水主之内市郎平壱人流死
一弐人乗 舟頭松前 三太郎
右舟頭水主共別条無之
一弐人乗 右同 喜左衛門
右別条無之
一弐人乗 舟頭油川 久右衛門
右同断
右之通去ル十九日朝六時頃より同五時迄之津浪ニ而小泊
間懸リ之舟破損如斯御座候旨申遣之作右衛門江達之
（八月七日の条）
一小泊村湊目付申出候は
一丸木船 三拾艘
共差弐人乗
一小廻船 六艘
同
一天当船 八艘
一田方 五反五畝弐拾七歩
一山畑 九畝歩
一塩釜 拾弐筒
一潰家数 四拾三軒
高無 万太郎
一流死 四人 同 新三郎
同 金兵衛
同 彦十郎
右之者共死骸相尋見出申候
一女牛弐疋高無 吉兵衛
右は津浪ニ而引流斃申候
外ニ
一旅船七艘 右間懸リ之船不残破船仕候
右水主之内六人流死仕候
右之通詮儀仕候所如此御座候旨申遣之作右衛門江達之、
流死尋出候死骸同所勤番見届之上別条無之候ハハ片付候
様大目付江申遣之
一赤石組代官申立候は轟木村塩木拾歩一先達而津浪流失之
処段々浪ニ而打上リ候分取集候分弐百廿九本相改相違無
之旨申出之作右衛門江達之
（八月十日の条）
一赤石組代官申立候同組村々塩釜家業之者、先月十九日大
浪ニ而塩釜流失ニ付釜道具□取願申立之僉儀之上作右衛
門江達之、申立之通御停止木伐取不申様申付之山方江も
申遣之
同月（十二月）二十三甲寅日 晴
（前略）
一一筆令啓上候冷気御座候得共志摩守様愈御勇健可被成御
座乍憚目出度御儀奉存候、次各様御堅固御勤可被成珍重
存候、然は今度其御地津波ニ付海辺之在家及難儀尤船共
数多損失通用茂差滞候由相聞候各様御苦労察入存候、右
之段出羽守承之候ニ付何品ニ而も御用立可申旨此度江府
よ里申来候、依之少分如何敷存候得共俵子并酒別紙之通
差越申候、下々御救之御用ニも罷成候様ニと存候、右為
可申進之如斯御座候 恐惶謹言
月日 棟方作右衛門
松前内記様 隈部伊織
下国斉宮様
蠣崎内蔵烝様
覚
去月十九日明ケ七時頃松前大浪ニ而村々潰死人注進書之写
一三拾人同所ニ而舟六拾艘程潰舟手者五六拾人死申候城下
一三拾人程 松前
一拾八九人程 あまたれ石
一六拾人程 茂草
一百三拾人程 幾よ部
一三百七拾人程 外ニ旅人八拾人程 ゑら町
一拾人程 をこしへ
一弐拾七人程 原口
一八人程 ちいさこ
一七拾人程 石崎
一弐拾人程 塩吹
一六人程 幾乃こ
一弐拾人程 原宇田
一七人程船手百八拾人程右所ニ而船八拾艘潰申候江差
一六拾人程 とまり
一三拾人程 田沢
一拾七人程 婦しきと
一百三拾人程 をとべ
一八人程 小茂内
一拾五人程 とつ婦
一四拾人程 三ツ屋
一弐百拾七人程 加嘯（蚊柱カ）
一百五拾人程 あひ野間
一三百人程 熊石
死人弐千人余御座候由
右は松前村々より注進前書之通書写参候ニ付差上ヶ申候以
上
八月 志摩守様御宿三馬屋村 松前屋長兵衛
一戸徳右衛門様
福士 弥内 様