[未校訂]大地震(注、宝永四年十月四日のことか)
阿波国内で古い地震で名高いものは康安元年の大地震で海
部郡由岐浦の地が裂けて長さ二百弐拾歩其径百歩の大きな
池となったといふのが太平記に見えて居る以来のものに吉
野朝廷時代の武家方後光厳院の貞治二年全上後円融院の康
暦二年江戸時代の慶長九年宝永四年の大きな地震もあった
が今津浦免許に住して以前は今津浦川口番所の番人役を勤
めて居った旧家である森本嘉之太氏方に蔵して居られる同
家初代の十左衛門が手記した文書の中に享保三年戌十月六
日に郡所へ指出した地震の報告に
覚
一壱間半に弐間之遠見御番所上にて五六寸ほど倒れ廻り
て壁崩雨戸壱枚破損同所取合廊下鴨居落申候屋根破損
仕候
一二間ニ四間ノ住家屋根破損仕中候
一雪隠破損仕申候
右は私居申御番所一昨四日之地震ニ破損仕申候御注進を
申上候右之趣被仰可被下候
亥ノ十月六日 森本十左衛門
常右衛門殿
茂次兵衛殿
と見えて居る。