Logo地震史料集テキストデータベース

西暦、綱文、書名から同じものの一覧にリンクします。

前IDの記事 次IDの記事

項目 内容
ID J0600476
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1633/03/01
和暦 寛永十年一月二十一日
綱文 寛永十年正月二十一日(一六三三・三・一)〔相模・伊豆〕江戸・駿河⇨二月十四日まで余震つづく
書名 〔日向変動記事〕「日向郷土史料集 六」
本文
[未校訂]寛永十年癸酉正月廿一日卯ノ刻武蔵・相模・伊豆大地震あ
り、武蔵国は尤も大動なり。江戸御城高石垣計り相違な
し。御殿主①、地震大動の時東西へ大靡くを②、内外の御番衆
今ころぶよと御覧ずれば起直り、今ころぶよと御覧ずれば
起直りせしより、兵③の御殿主と御前④にて御名付け遊ばしし
となん。諸大名屋敷長屋門⑤ころびたるもあり。町家同断。
歩行人は足先へ踏む事ならず、行く馬は四足を縛り付けた
る如くなり。馬に乗りたる人馬より下る事ならず。御城よ
り中橋・芝口筋違い通り動き強し。中橋より浅草辺動き弱
し。右は江戸中の事。相州小田原城内家ころびたる事数し
れず。第一小田原町東より西迄両側共に家一度に倒れ、寝
ながらうち殺されたる⑥人もあり。起きて座しながらうち殺
されたる人もあり。家内⑦をはたらく者と見えうち殺された
る人もあり。同廿一日の改め⑧、男女死人名⑨を云ふ人計り二
百三十七人、是は侍方名を云ふ人許りなりと。明る廿二日
江戸へ御申上げ。其の外町家童⑩、召仕⑪の男女死したる人は
数しらず。死にかかつて居るも有り。上り下りの旅人泊り
かかり、打殺されたる死骸一所に捨てたるに、国元より尋ね
来り、あまたの死骸の中にて見分けて弔⑫ふ人もあり。又見
分たず帰る人もあり。あわれなりける次第なり。依って小
田原地震と名付けたり。此の中不思議⑬の事には、小田原町
の真中に北南向合両側弐軒⑭倒れず有り。是又不思議⑮と江戸
へ申上る。又同町の東西のはづれに草屋十軒許り宛有り。
扨て伊豆国には箱根峠の東の口行けば⑯、左の高山より大石
壱つ落ち、飛脚の馬に乗りて通りけるを人馬共に馬方迄三
人一所に打殺す。馬方は小田原へ、飛脚は紀伊国の飛脚な
り、と箱根御番衆より江戸へ申上る。其の石の落ちて打ほ
ぎたる跡弐間口⑰ありとなり。又三島の町の入口横に動り⑱割
り、其の日上り下りの馬とまる。右三カ国の隣国は常の地
震より少し強く動りたると江戸へ申上る。伊豆⑲より京迄の
事同卯ノ刻に動⑳はあり、常の地震とは卯刻の地震は右の
通り。又同日の辰刻に大動あり。依って江戸中驚き用心す
る。中にも御屋敷㉑にては舟笘を以て庭に仮屋を作り御座成
されしとなり。正月二十一日より廿九日迄は昼夜少々宛動
㉒きし故、廿九日迄昼夜庭の笘仮屋に御座ありしとなり。諸大
名御屋敷何れも同断。付たり、七郎右衛門卯刻の大地震の
時江戸長屋㉓の二階にいまだ寝て居るに動き出す。やれ地震
よ、と思う内に大動㉔になり、起きたれ共左右に転び帯を結
ぶ事ならず。我身大事と思う心もなく、長屋転びたらば打
殺さるると計りあんじたり。小田原㉕の犬死理りなりとぞ。
地震の時は少しにても早く起きるが本手なり。思案する内
に大動になると起きる事ならず。左右上下へ動く物なれば
戸障子もあかず。㉖地震と思わば先づ㉗戸をあくるものなり。
其の上火の用心兼て心得あるべきなり。右の辰ノ刻の地震
には、馬場通る人、長屋なり軒の下へ寄り、駒寄に取付き
居たり。長屋転びなば打殺さるるなり。よくよく心得べき
事なり。
注① 前出。江戸城の天守。
② 大の下に欠字あるか、大きく靡くか。
③ 兵すなわち「つわものの御天主」とは意明瞭でない
が、要するに丈夫な天守の意であろう。佐土原がそ
の工事にあづかったので、一層誇大につたえたので
ある。
④ 将軍の前で二代忠興が兵の御天守と名付けて得意が
ったのだろう。
⑤ 左右に長屋をそなえた門。
⑥ 討殺されたる、とある。以下同じ。
⑦ 家内にはたらく、カ。
⑧ 調査。
⑨ 名前がわかっている人だけ、或は名前を挙げるほど
の人だけ。
⑩ 童べ、とある。
⑪ 召使。
⑫ 吊、とある。
⑬ 儀、とある。
⑭ 北と南に向き合う両側弐軒。
⑮ 儀の字を用うること同前。
⑯ 東の口行ば。
⑰ 間口とは家屋前面の巾をいう。
⑱ ゆり。方言地震のことを、「なえがゆる」という。
⑲ 以下の一節意不明瞭。
⑳ うごき、と訓むカ。
㉑ 江戸の藩邸。
㉒ 「動シ故」とある。
㉓ 江戸藩邸の長屋。
㉔ 「大動ニ也」とある。
㉕ さきに述べられている小田原の惨事を指す。
㉖ 「明ズ」とある。
㉗ ここも「明ル」とある。このあたり方言に通ずると
ころが散見している。
出典 新収日本地震史料 第2巻
ページ 123
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県
市区町村

版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

IIIF Curation Viewerで開く
地震研究所特別資料データベースのコレクションで見る

検索時間: 0.005秒