地震史料集テキストデータベース

[未校訂]嘉永七年○安政元年六月十五日晴、時々地震、夕雷雨、
一今曉丑刻頃、強き地震有之、其後も少々づ〻度々有之候。
右に付、御所向御機嫌伺之儀、自分混穢に付、使者差出方
御附江間合候處、此節柄之儀に付、不及其儀旨、傳奏衆被
申聞候旨、答有之。
一今曉之地震に付、桂皇居御庭通し、近衞殿廣庭茶屋之内江
御披被遊、尤敏宮にも御庭通し御同道被遊、御機嫌不被爲替
旨、長谷川肥前守ゟ不取敢以使者申越之、其外御方々樣御
異狀も不爲在旨、是又申越之候。尤今曉より引續度々震候
に付、いまだ皇居へ還御無之旨、爲心得申越候事。
一動搖相止に付、禁裏、准后、敏宮、還御被遊候旨、御附よ
り申越之。
一傳奏衆より左之雜記到來。
今曉丑刻前地震強、其後度々動搖有之候に付、庭上に假屋
を被構候、其内暫時近衞右大臣亭江被爲渡御、座所出來之
上、地震も先鎭り候間、巳半刻過、如元桂皇居江還御被爲
在、益御機嫌能被爲成候、准后敏宮等も御同樣に候。新待
賢門院御在所、御庭向甚狹少に付、正親町家江被爲渡候、
依此段爲心得申入儀事。
六月十五日
桂皇居、庭向狹少に付、模樣に寄候而者、近衞家江又候被
爲渡候御儀も可有之候、其許御心得迄に可申入置、關白殿
内命候事。
六月十五日
一地震に付、以刻附左之通申遣候。
但亥之下刻附。
小奉書
今曉丑刻前、當地地震強、其後も度々動搖有之候に付、禁
裏御所方、桂皇居御庭上に假家を被構候、其内暫時近衞殿
亭江被爲渡、御座所出來之上、地震も先鎭り候間、巳半刻
過還御被爲在、益御機嫌能被爲成候。新待賢門院に者、御
在處御庭向狹少に付、正親町家江被爲渡候旨、傳奏衆被申
聞候。尤桂皇居、御庭向狹少に付、模樣に寄、又候近衞殿
へ被爲渡候儀も可有旨、關白殿内命有之候由、是又兩卿被
申聞候、右者當時假皇居之儀に付、此段申進候。
一近年に無之地震に有之候得共、御所向、幷二條御城内外、
御別條無御座候。右に付、御機嫌伺之儀、拙者儀、此節混
穢中に付、以使者可相伺哉之段、御附之者を以承合候所、
不及其儀旨、傳奏被申聞候よし、御附之者申聞候間、此段
も申進候。以上。
六月十五日　脇坂淡路守
阿部伊勢守樣　牧野備前守樣　松平和泉守樣
松平伊賀守樣　久世大和守樣　内藤紀伊守樣
十六日晴、折々雨、昨日強き地震後、時々動搖有之。
一昨曉之地震に付、奈良表倒家、怪我人等之届有之、則戸田
能登守差出候荒增取調之書付、今日之宿次に注進いたし候
一右同斷に付、怪我人も有之、破損所等も取調之上、可被申
聞候得ども、此段御届候旨、石原清右衞門より書付差出申
候。
但大津町潰家、且御役所破損所等之儀は、跡ゟ可申聞旨
清右衞門申聞候に付、今日宿次に注進見合候事。
一敏宮、昨日近衞殿廣庭江、主上御同樣御避被成候處、昨夕
如元一乘院里坊江、還御相濟候旨、傳奏衆より被申越之。
昨十五日之部、
一本多隱岐守、警衞人數、地震に付、即刻繰出し、皇居御近
邊に控居、猶御附江承合之上、警衞罷在候處、鎭り候に付
最早不及其儀旨、長谷川肥前守差圖いたし候に付、引取候
旨、届有之。
十八日、雨、折々地震。
十九日、曇、折々小雨。
一奈良表、去る十五日之大地震ゟ、引續時々動搖有之、追々
間遠に者相成候得共、今以震止不申、いまだ在方等迄調者
不行届候へ共、倒家凡四百軒程、死人五十人許有之、右に
付關東江直注進之儀、地震之例者無之候得共、出火之節、
二百軒以上類燒之節は、直注進之先格に付、今般之儀も直
注進に而可然哉に付、戸田能登守より内意伺之書付差出候
間、右類例有之上者、不一通異變之儀に付、伺之通可致旨
及差圖候事。