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[未校訂]文政十三寅年七月二日七ツ時頃、亰地震荒増書
取覺、
文政十三寅年七月二日申の刻、御太鼓打きる間もな
く地震、先最初は大石に而も落候樣成る地響いたし
申候處、夫より二尺程も歩行申候間、ゆり出し、次
第に強相成、御小屋内に堪兼、庭へ馳出候處、番參（所ヵ）
は勿論、鴨居壁等落候故、大小を抱へ、御小屋内御
藏前、其外高麗御門前、廣き場所へ走出候處、御藏
屋根瓦は瀧の如く落、壱番貳番參番四番引出し御小
屋小屋、住居幷下陣等、一時にゆり潰し、高麗御門
總銅の御門、内へたをれ、續き御土塀、幷御天守臺
塀、所々たをれ損じ、御堀端通り御土居、多分破れ、
平地も所々七八寸位に割れ、夜分抔は足をはさみ候
位、御太鼓櫓脇石灰雁木ゆり落ち、中頻り御門臺續
き石垣、四五間程抜落、西御門御燒失跡御門臺石垣
所々崩れ落、西御門橋ねぢれ、往来も危く候間、お
り／＼出入留り、重有抔は中々通路いたし兼候得共、
飯米は無據品御座候間、五升宛持入候様にと申事に
候、夫ゟ日増にねぢれ申候に付、今日迄大手御門通
陽に相成候、扨北御門續き御土居上土塀、石垣共、
百間程、外御堀江たをれ、水溢れ出候に付、諸司代
屋敷前通り、満水に相成り、往来出來兼候位之事、
御廊下橋入口御門變土塀、四五拾間程たをれ、東御
門臺、石垣、所々はらみ、東御門大手後土塀、大體
たをれ、御門臺に有之候御立者御道具外箱等、不残
氣崩れ、辰巳未申之御櫓江御移し替に相成、右御櫓
も内外土落、鉢巻等かけ落申候、御焔硝御藏、屋根
瓦不残落、稲荷曲輪中仕切御門、棟返り落、石垣も
抜落、往來も氣遣數體に御座候、稲荷曲輪與力小屋
三軒崩れ、同心小屋は不殘ゆり潰し、同心は三人、
間に合兼、押に打れ、漸々助け出し候由、先一命に
は拘り不由と申事に候、又稲荷社たをれか〻り、石
鳥居五本、燈籠七八本も可有之哉、不殘ゆりたをし、
小さくをれ申候、七ツ半時ゟ、地震は先々輕く相成
候へども、今日迄七日之間、始終地響いたし其度々
に所々壁瓦等は勿論、潰れ残り候御小屋々々ゆり潰
し、其度度に黒煙相立候ゆえ、上下身を置候所無之、世の
滅し候節かと、各色を失ひ居候事に候、且御小屋々
々の内、下やの者には、押に打れ候し者を助出し
候得共、歩行出来兼候もの兩三人有之候、是は命に
は別條有間敷、戸板にのせ、寢させ置候、其外上下
共、七日七夜之間、御小屋内空地、寄り集り居申候、
暮六時頃、諸司代御見廻り有之候に付、兩御番頭も
御出に而、御殿、金藏、御焔硝藏、御門臺、御櫓等、
不殘御見分有之候に付、御城入有之候、六ツ御太鼓
打莚には候得共、諸司代五ツ時過に御城入に相成、
九ツ時過漸相濟、右に付、六ツ御太鼓は八ツ時迄打
のべに相成候、折々強地震有之候而、御太鼓坊主共
大難儀、何茂覚悟仕、人心無之由、跡に而申聞候、
尤成事に御座候、尤諸司代御城入に付、地（他ヵ）役も不残
御城入、御門番も御門に相詰候由、夜中も不絶
地響、不殘野陣いたし居候處江、諸司代、御番
頭共御通り、御見廻りに而御座候、
御殿向御天井、幷御襖等、不殘損じ、御欄間御彫物
等も落損じ候由、御車屋も瓦等落損じ申候、御城外
地（他ヵ）不殘住居幷門塀等ゆり潰し、諸司代屋敷、御所
に至迄、餘程損じ申候由、御城外市中も住居土藏等
多くゆり潰し申候由、怪我人多く御座候、怪我人、
町奉行江書上げ候由、町人共申聞候、怪我人千三百
人、即死二百八十人と申事に御座候、
土御門ゟ諸司代江申上候由風聞仕候には、まだ是程
の變事可有之候間、用心いたし候様にとの事に御座
候由、右に付、御城外市中、多くは廣き所へ出居、
今以夜も竹藪、或は御城下御柵内番塲と申所へ出、
野宿いたし居申候、御城外ト通リ石垣、總不殘はら
み、御土居通りは多分崩れ、地面は響割れ、五六寸
又は八九寸位にゑみ割れ、此上大雨に而も有之候得
者、割れ候所ゟ水入、直に右石垣等も崩れ落可申哉
と被存候、引出し御小屋表通り御堀端は餘程ひゞ割
れ、くぼみ候所も有之、月増にひゞ割れ、通路も不
安心に御座候、今八日迄、七日七夜ゆり居候間、一
統人心地なく、變事を侍居候様に御座候、日々潰れ
残り居候御小屋々々は崩れ、其度度黒煙立、一統總
立に居候事に御座候、其上誠に兩三日中は炎暑強御
座候而堪兼候事〓〓四時頃ゟ八ツ半時頃迄之内は、何
茂御土居松の木の下に而、しのぎ申候、實にあわれ
成事、中々筆紙認兼候事に御座候、
扨誠に理外之事と申は、御小屋内に井戸四ツ有之、
内三ツは地震後、どろ水に相成、中々呑候様には無
之候處、殘り一ツは常に水悪敷井戸に御座候處、
地震後俄に清水に相成、其上水十分にふへ申候、是
等は一向に分り不申事に候、右之地震一通り之事に
は無之、今日迄地響きいたし居候は、近國之山に而
も燒候事と存候、然共今日迄十日相成候へ共、一向
山燒候沙汰も無之、分り兼申候、大坂ゟは早速便り
御座候所、大坂は一通り之地震と申事に候、道中筋
は本番酉（所ヵ）手返しに登り候山角主税、土山宿止宿に御
座候處、彼地も一通り之地震と申事に候、伏見邊迄
強くゆり候様子に御座候、何れ京地ゟは西北に當り、
日々地響いたし、ゆり出し候間、越中立山、丹波亀
山邊に而も、山荒に哉と、一統推察いたし候、又若
狭邊大津なみにて、今以波おさまり兼候哉と申事に
候、若州邊三四里間、沼に相成、人家夥敷潰申候沙
汰に御座候、丹波亀山之城、幷城下共、近國に而は
一番強く當て申候由、續き候而は二條御城と申事に
御座候、山荒之沙汰も、十日餘に相成候得共、慥成
事も知れ不申候間、左も無之事と被存候、今十二日
迄、日々地震いたし居候間、何れ變事と奉存候、
御城内兩御番頭、兩組頭、幷御番衆、兩與力迄に、
少しも別條無御座候、
七月十二日認める、
右は、二條在番之御番衆より、認越候書面、借り寫
もの也、于時文政庚寅八月廿一日夜、
丹波園部藩、江戸表書状差越候越〓書、
當月二日、老人も不覚大地震、亀山は園部ゟは強く、
〓部之玄關庇損落、御城内にも少々宛は破損有之候
得共、爲差儀なし、町東の入口御番所、高塀共倒れ、
相原三宅町中に而、廿五軒倒家有之、死亡四人、怪
我人貳人と申御届に而、亰地は上亰、外亰、伏見邊、
愛宕山、副而嚴敷、御城内外、御所、御破損所多、
堂社佛閣、入念候普請、新敷丈夫成る建前程、別而
大破倒潰れ、微塵に相成、兼而之損家古家等は、却而
損建相濟由、江戸の樣成手弱き建前、麁末成る普請
之仕方、地震之爲には宜敷事由に候、大井村御茶屋、
瓦屋、新普請、丈夫に七八年以前出來候故、餘出損
候由、空河原長堤之上、十二三間之所、地上裂割申
候、其外在町無別條、御館内等瓦屋根之内、御焔硝
藏屋根瓦二百枚程落、都合瓦五千枚損、建前向少々
宛之〓曲りにて、御家中無別條致安心候、
清水御殿伏見宮老女よりのふみ、
七月九日出、
返々めで度〓〓〓、
殊の外残暑つよく御座候へ共、いよ／＼當御地御揃
あそばし、御機嫌よくならせられ候御事、御めで度
あり難がり存候、左様に御座候へば、當月二日、け
しからぬ大地震に而、其御地に而聞せられ、嘸々御
おどろきあそばし候御事、御案事思召候、御當地は
ことの外御築地内始、大ゐに／＼あれ參候へ共、此
御傳御揃あそばし、御格別の御障り樣もあらせられ
ず、御朝夕の御膳も、毎々御手附せられ、御機嫌克
成られ候儘、御心安樣に思召せられ〓〓、其御地
に而は如何あらせられ候や、とりとめ不申候へども、
六月晦日には少々地震の樣にも聞せられ候、猶御委
敷聞せられ度思召候、當御殿、二日七ツ頃より御藪
へ成らせられ、晝夜御あかしあそばし、ま（誠）事にま事
に御めづら敷御事、御おどろきあそばし候御事、御
揃遊ばし御別條もあらせられず候（候脱ヵ）、御格別の御働樣
もあらせられ候、御家事遊ばされず候樣、よろしく
御申上被成候やうにとの御事に御座候、二日より九
日迄の處、今以日夜朝暮、大小度々ゆり、きびしき
のも御座候、輕きのも御座候へども、一日中に十二
三度もゆり、しづまり不申、何卒々々、はやくしづ
まり候様にと思召候御事御座候、まづ／＼右の段、
御手前樣がた迄申入參らせ候、必ず／＼御案事あそ
ばぬ樣、何も／＼よろしく御沙汰の御事、御たのみ
申入參候、いまだ残暑きびしく御座候ま〻、随分々
々御用心被成候やうにとぞんじ參候、めで度〓〓〓
茶池初
八重園樣
藤むら樣
人々まゑる、