[未校訂]かくて日をおくりしほどに、七月〓な〓しかば、雨〓まな〓く砂をふらし、あるいは風よつれて台き毛のごときものを此あたり○下野那須郡迄飛來り、又大地のふるふ音して、夜も晝も聞〓けり、是はいかなる事やらんと、不思議なりとて、人々打寄いひあへり、是は信濃の國淺間山の燒出し、其大勢のとゞろ々音とふく迄響渡りて聞へけり、
かくて山の上の煙りは空をおほひ、電光ハ夥く、雷〓く鳴りはためき、其あたり二三里がほどくらやみとなりて、晝夜わからずありしかば、灯火を用ひ、つね〓あかしをけす事あたはず、天よりしては泥土をふ〓し、或は火の石を飛しつゝ、其震動雷電火〓いやまさりしかば、人々肝を〓し日を送りし事、七日七夜〓むよび、つひよは、淺間山の高山破崩て、大水を出しかば、火の石泥をおし流せし事夥し、〓〓おそろしさ、たとへていわんよくもなく、言語〓断えたる事共也、
其上燒石さん乱して、二三里がほどに充満り、其石砂〓ふらせしは、二十里〓越けり、中〓〓高さ三間ほど、長さ十三間の大石、よろび出たり、かほどの大石たるだ〓、さばかりの洪水たれば、一夜の内は押流し、其道のり十三里ふて留り、是元より燒石たれば、其流の水も大勢湯とわきかへり、水の中よりして、しはとば煙りたちのぼり、されば、此石の上ま流かゝりし竹も木も、たちまち、もゑ上り、こと/\しく火となりしを見し人、竒異のおもひをなせり、恐しなどもおろか也、
かほどの大石たるをだに、押流も事なれば、五問や三問の石などは、かづかぎりもあらばこそ押流し押流し、流かとりし勢ひゆへ、其道〓村々里々、其数都て五十三ケ村、一時がほどよ押流せり、其家数は千七百八十三軒、人は三千七十八人をおぼろしころせり、