地震史料集テキストデータベース

（前略）
○元禄十六年十一月江戸大地震ニ由テ、伊勢・八幡・加茂・松尾・平野・稲荷等ヘ江戸ヨリ御祈ヲ仰セ下サレ、京都諸司代松平紀伊守殿ヨリ伝奏、柳原殿高野殿ヘ申サレ、ソレヨリ祭主家ヘ仰セラレ、祭主家ヨリ十二月四日ニ両宮ヘ下知アリ。同十一日マデ両宮一七日ノ御祈祷執行ヲ遂ケタル旨ノ請（ウケ）文ヲ進ム。是ノ時両伝奏ヨリノ仰ニ両宮ヘ公武ヨリ御祈仰セ下サレタル時ニ、前々下行アリタルヤ否ヤノ旨、委シク申シ出ベシト祭主家ノ状ニテ宮司ヘ尋アリ。宮司ヨリ其ノ返書ニ、司家類度ノ回録ニテ其等ノ旧記焼失、故ニ古例考ヘカタシト白シタリ。古例考ヘカタカルベキ間、コノ通リニ返書遣シ然ルヘシト内々ニテ祭主家ヨリ指図アリタル故ニ、如此ク書キテ進メタリ。然レドモ、終ニ下行ノ沙汰ナカリシナリ。亦地震ヲ俗ニナ井ト云フ。旧シキ辞ニテ、推古紀ニ地震ノ二字ヲナ井ト訓シ、又武烈紀ニ太子ノ歌ニ「那為我与〓拠魔耶黎夢之麼柯枳（ナ井ガヨリコバヤレンシバカキ）」ト云フハ地震（ナ井）ノ揺（ユ）リ来バ破レン柴垣ト云フナリ。然レバコノ比ヨリナ井ト云ルナリ。
（後略） 注、本史料は、伊勢神宮（外宮）の祢宜を代々務める渡会家の清在が享保二十一年（一七三六）に著したものである。