[未校訂]六九 十一月四日八ツ半時大地震。所々の土蔵落たり。品川よりかな川辺至て強く、家多く倒れたり。怪我人も多きゆへか、町々御詮義あり、触廻る。三十年来の大地震のよし。其夜九ツ半時又ゆる。昼よりは小し。され共昼のに驚し気さめず、周章したる人多し。浮説さま\/。、予は其日京伝子の宿所に有り、て、二人手をとりて逃出せし也。、
○武家町家に限らず、ぬりごめ、土蔵のたぐひ大方破損したり。かな川辺は宿の中、家過半倒れ死亡の者も数多あり。井戸の水皆濁る。又所により、悪しき水の清水になりたるも有り。往し天明二年の地震よりは、よほど強し。五十年来おぼへず。廿日比迄は、たゞ地震のうわさのみにて余事をいわず。