地震史料集テキストデータベース

[未校訂]（奈良奉行所御番所日記）
（宝永四年十二月）
当番玉井与市右衛門
一同日（五日）江戸中橋伊勢屋作次郎手代与八郎以口上書申上候
者、織田内匠様為御用江戸ニ而上り為替仕銀子指上、御当
国戒重於御屋敷受取申御約束ニ御座候処、相滞申候而迷
惑仕候銀高覚、
一銀拾九貫三百七拾六匁八分五厘
亥ノ九月廿五日限御手形三通
一同九貫五百五拾目六分ハ
同十月廿五日限御手形三通
　右之通ニ御座候、於戒重銀子御渡シ可被下御手形之宛
所ハ、右御内持田新兵衛殿・嶺六左衛門殿ニ而御座候ニ付、
日限ニ御渡シ被成被下候様ニと御断申上候処、十月四日
之地震ニ付、御屋（1）敷御破損多御座候由ニ而、今少相まち候
様ニと被仰付候ニ付、相待罷有候所ニ、終ニ御渡シ不被下
候、右之銀ハ繰綿相調可申心当之銀子ニ御座候故、則先
達而綿問屋大坂ニ而ハ桑名や与市、堺にて帯屋長右衛門、
平野ニ而米屋次郎右衛門、和州ニ而者今井塩（町脱カ）や覚兵へ右四
軒之問屋にて綿相調させ出シ申候処、右之仕合ニ御座候
ニ付段々預催促ニ迷惑仕候、然処頃日被仰渡候者、右之銀
子年苻（賦）ニ仕候様ニとの事御座候、為商売之遠国へ罷上り調
物可仕心宛之銀子ニ御座候へ者、於和州ニ御渡相違無御座
様ニ被仰遣被下候様ニと江戸御役人様方へも重々入念指
上申銀子ニ御座候処、右之仕合大分手宛相違仕候而礑行
当商買茂不自由に罷成、江戸ニ而主人手前旁難儀仕候、御
屋敷方之儀ニ御座候へ者、御訴詔申上候儀も迷惑至極奉存
候へ共、諸方指引茂仕廻江戸へ罷下申節ニ御座候ヘハ、
右為替銀滞候ニ付方々問屋方手前も不埒ニ罷成候故、無
是非御訴訟申上候、右之趣被為聞召分ケ、御慈悲之上戒
重御役人中様方より無相違御渡シ被成下候様ニ、被仰付
被下候ハヽ難有可奉存候旨申上ケ、菊地門太夫を以達
御耳候処、口上書委細御披見被遊候、来ル八日織田内匠
殿役人罷出候様ニ指紙遣し可申旨被仰出、則相認遣之候、
尤与八郎ニも罷出候様ニと申渡候、以上
（1）　現奈良女子大の地
当番右同人
一同日（七日）桜井孫兵衛殿御代官所高市郡今井村善左衛門・覚
兵衛、辻弥五左衛門殿御代官所葛下郡高田村徳兵衛、藤
堂和泉守殿下山辺郡丹波市村源太郎・次郎左衛門・同下
十市郡新口村又市郎、本多能登守殿下葛下郡下田村与次
兵衛・同下広瀬郡南郷村利右衛門、内山永久寺下広瀬郡
細井戸村弥右衛門以口上書申上候者、私共儀繰綿問屋共ニ
而御座候、依之関東方之綿商人中ゟ申来候繰綿を売調大
坂へ出シ申ニ付、河州国分村之問屋彦兵へ方迄出シ、彦
兵へ方より川舟ニ而大坂江出シ申候処ニ、十月四日之地震
之節、繰綿荷物紛失仕候由申越候ニ付、被遂吟味候様ニと
申遣候ヘハ、過半者出シ申由被申越候へ共、相残ル所不
埒ニ付、大坂御番所様江御訴訟申上度奉願候、乍恐御慈
悲之上被為聞召上、御暇被為下置候ハヽ難有可奉存候旨
申来、菊地門太夫を以達御耳候処、断之段御聞届ケ被
成候間、勝手次第ニ罷越候様ニと被仰出、御意之趣申渡
候、以上
玉井与市右衛門
当番右同人
（七日）一同日織田内匠殿御家来市川金左衛門を以被仰越候者、
近年御勝手御不自由其上十三年以来江戸両御屋敷焼
失、旁以御難儀被成候ニ付、於江戸御老中様方へ書付
を以被仰上諸事御倹約被成候ニ付、右為御届被仰遣候、
則御老中様方へ被上候書付被遣候、
私儀十三年已来居屋敷両度、下屋敷一度悉類焼仕候、
兼而勝手不如意之上、右之仕合致難義候得共、是迄
所々御奉公無滞相勤来候、然処先月四日上方筋地震、
最前御届申上候通、在所居宅及大破、家来士屋敷其
外過半潰并領分民家数軒潰申候、就夫勝手必至差詰、
居宅修覆茂悉早速ニ者難仕、家来之者領分救之儀も不
任所存候、然上者一類共其外江茂万事急度断申致倹約、
何とそ取続御奉公相勤申度奉存候、依之申上置候、
以上
十一月廿六日　織田内匠
右之趣菊池門太夫江申達候処、追而可被達　御耳候間、
其通致挨拶戻シ候様ニと被申、金左衛門ニ申談候、以
上