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項目 内容
ID J1800432
西暦(綱文)
(グレゴリオ暦)
1854/12/23
和暦 嘉永七年十一月四日
綱文 安政元年十一月四日・五日・七日(一八五四・一二・二三、二四、二六)〔関東以西の日本各地〕
書名 〔嘉永七甲寅十一月四日大地震記〕○静岡県浜北市小松
本文
[未校訂]袴田豊家文書
嘉永七甲寅十一月四日大地震記
堤村尾
 嘉永七甲寅年冬十一月四日天気静かにして風もなし。少し
曇空なりける。此時四方よりドロドロと云う声ありて大地震
動して来る。家倒れ、地は波のうつ如く、道路田畑さけて泥
水を吹出す所もあり、えみ口(さけ目)は一、二寸(3~6
㎝)より五、六寸(15~18㎝)ぐらい、もつとも近郷には三
尺(90㎝)余りもえみし所も数多(あまた)あり。草木動揺
して天地もくだくる如くなり
 この時に至りて老少男女申すに及ばず、壮んなる者に至る
まで、ふるい怖れて我家をころびでて、只這いまわる斗りな
り。立つ事もならず、歩む事も叶わず、互いに取ついて、顔
色も変り生きた心地はなかりけり
暫時の間に当村三百余軒の内、本家を倒し、或は庇を落し、
土蔵物入等に至る迄損ずる事凡そ百余軒、其余もゆり動かし
て正しく立つ家はなし。誠に前代未聞の地震と周章する事お
びただし
 しばらく有りてゆり止みぬ、なれ共、小ゆり折々ある故に
人々心安からず、思い思いに竹藪等に小屋をしつらい、我ま
しに難を遁れん、身を全うせん事を専要として移り居れり
 次の日、五日の夕方七ツ頃(午後四時頃)西南の方に当り
て物の響く声あり、山の崩るる如く大波の至るが如し。人々
云う「津波来る、荒井(新居)舞阪辺迄は既に陥(お)ち入
りぬ、」
と云うて怖れあえり。甚だしき者は上の村上の村へと逃走
り、尾野金毘羅山の山に登り難を避けんとする者千余人
 後にて、坂を逃る姿を真似する人あり、おかしかりける風
情なり。此の物音、大阪にて聞きても西南に聞え、四国の
内、山崩れ地さけ、水出でし所ありと云うと
小地震折々あり数うるにいとまなし。中ゆり十日頃、十四
日、廿三日、廿五日、廿八日、極月(十二月)もおりふし有

 是に於いて改元有りて安政元年と云う御触れあり。さも有
るべし、怖れ恐るべき年なりける。夏六月十四日大和奈良
辺、勢州桑名四日市坂ノ下辺迄、江州日野八幡辺大地震、其
跡冬十一月迄小ゆり絶えず有りて、今度、又四日の大ゆり有
り、夏強き所軽し、夏軽き所は強し、倒家数多(とうかあま
た)ありと云う
 年も漸く暮れて安政二年乙卯正月となりにけり
 七日夜五ツ頃(午後八時頃)中ゆりす。此時も又人々恐れ
て家を出る者多し、暫時にて止む。此後も小ゆりあり、猶未
だ収まらぬと思い侍(はべ)りぬ
附大小ゆる毎にドロドロという声あり
(各地状況聞き書き)
一浜松東海道筋道上、中郡(東)天竜川限、西原(三方原)
限、二又(二俣)辺、原西祝田金指、東森辺当村に准ず
一東海道道下、馬込川東浜辺通り天竜川限り当村より一段強
し。
一天竜川東、池田辺中泉見付欠塚(掛塚)辺倒家凡そ七分通
りと云う。
一二ノ宮横須賀辺倒家八九分通り。
一袋井欠川(掛川)山梨等皆倒れの上焼失す。
一阿多古奥秋葉山辺に至れば緩し、奥程緩し。
一気賀辺緩やかなり。
一浜手通り、欠塚(掛塚)辺より荒井(新居)辺迄津波の難
甚だし。沖より大山の如く打来り、汐除堤等崩れこみ既に
舞坂東馬郡の間は新田場は切所となり、今切口は大きに荒
れ広く深く成る由、大海同様の波立つと云う。
五日津波の節は舞阪西弁天山の松の上を大船二艘吹寄せ
られ、のり越えて漂い通り村櫛と山崎とに懸りし由、前代
未聞(ぜんだいみもん)の事どもなり。
平日汐高き事三尺(90㎝)余、海荒き時は五、六尺にも
及ぶと云う。総じて入江通り魚逃げて魚猟なし。
一相良岬辺は海浅瀬、汐引き駒ケ嶽常に見ゆると云い、尤も
魚猟は少しなり。
一三州田田原辺津波もつとも強しと云う。
一豆州下田津波強く町家大半引かるると云う。
一駿州は嶋田宿より箱根関西迄宿々強き由、焼失等数ケ所あ
り。
一大阪地震は中通り津波強く来り家多く引れし由聞ゆ。
一四国地震強き由。
一中国安芸、肥後豊後辺もつとも強きと云う。
一関東は大きに軽き由。
一江戸右同断。
一信州松本飯田辺は当村に准ず。
一三州奥筋は尤も軽しと云う。
出典 新収日本地震史料 第5巻 別巻5-1
ページ 1135
備考 本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県 静岡
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版面画像(東京大学地震研究所図書室所蔵)

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