地震史料集テキストデータベース

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項目	内容
ID	J0400415
西暦（綱文）（グレゴリオ暦）	1854/12/23
和暦	嘉永七年十一月四日
綱文	安政元年十一月四日（西曆一八五四、一二、二三、）九時頃、東海・東山・南海ノ諸道地大ニ震ヒ、就中震害ノ激烈ナリシ地域ハ伊豆西北端ヨリ駿河ノ海岸ニ沿ヒ天龍川口附近ニ逹スル延長約三十里ノ一帶ニシテ、伊勢國津及ビ松坂附近、甲斐國甲府、信濃國松本附近モ潰家ヤ、多シ。地震後房總半島沿岸ヨリ土佐灣ニ至ルマデ津浪ノ襲フ所トナリ。特ニ伊豆國下田ト志摩國及ビ熊野浦沿岸ハ被害甚大ニシテ、下田ノ人家約九百戸流亡セリ。當時下田港若ノ浦ニ碇泊セル露國軍艦「デイアナ」號ハ纜ヲ切斷セラレ、大破損ヲ蒙リ、七分傾キトナリ、後チ遂ニ沈沒シタリ。震災地ヲ通ジテ倒潰及ビ流失家屋約八千三百戸、燒失家屋六百戸、壓死約三百人、流死約三百人ニ及ベリ。翌十一月五日十七時頃、五畿七道ニ亘リ地大ニ震ヒ、土佐・阿波ノ兩國及ビ紀伊國南西部ハ特ニ被害甚大ナリ。高知・德島・田邊等ニ於テハ家屋ノ倒潰甚ダ多ク諸所ニ火ヲ發シ、高知ニテハ二千四百九十一棟燒失シ德島ニ於テハ約千戸、田邊ニテハ住家三百五十五戸、土藏・寺院等三百八十三棟ヲ灰燼トナセリ。房總半島ノ沿岸ヨリ九州東岸ニ至ルマデノ間ハ地震後津浪押寄セ、就中紀伊ノ西岸及ビ土佐灣ノ沿岸中、赤岡・浦戸附近ヨリ以西ノ全部ハ非常ノ災害ヲ蒙リタリ。津浪ハ南海道ノ太平洋岸ヲ荒ラシタルノミナラズ、紀淡海峽ヨリ大阪灣ニ浸入シ多大ノ損害ヲ生ゼシメタリ。震災地ヲ通ジ倒潰家屋一萬餘、燒失六千、津浪ノタメ流失シタル家屋一萬五千、其他半潰四萬、死者三千、震火水災ノタメノ損失家屋六萬ニ達セリ。
書名	☆〔靜岡縣志太郡誌〕
本文	[未校訂]嘉永七年十一月四日、午前八時より午後一時頃迄、休みなく大地震あり。甲斐・相模・伊豆・駿河・遠江・三河邊に迄及ぶ、當時の慘狀大略左の如し。始めは小ゆれなりしも追々強く、家々の人々散々に東西へ逃げ去る。破壞の物音凄しく、田中御城御殿を始め、表御多門・新宿御門・不明御門、其の外御藏本丸・二の丸・塀・石垣等に至る迄皆潰れ、丸の内家中屋敷、白子裏新宿迄大破に及び、壁土黑煙をなし、眼を開いて見る能はず、譬ん方なき前代未聞の事なり。藤枝宿潰家・半潰・大破・小破に至る迄、不難の家一軒もなし。上傳馬町神明宮石の鳥居笠石折損し、御高札場・稻葉山常夜燈不難、橫町・辻・木町・川原町邊・大地笑み裂れ、泥水吹出し、二三尺許も上へ飛走り、井戸・川も吹出し、忽ち往還泥水流れ渡る。瀨戸川其節天氣打續き無水なりしが、山間の谷々笑み目〳〵より、泥水吹出して忽ち出水し、御領主へ腰水註進を致す程なりき。然る所、橫町油屋より出火、九十一軒燒失、宿内怪我人數多あり、即死五人を出す。御城内其の外近在を合すれば、即死凡そ二三十人に及びたりといふ。翌五日に至り、誰れ云ふとなく津浪上る由、近邊山々へ逃去るやう申觸しゝより、諸人狼狽し、騷ぐ事一方ならず。此の實惡人黨の流言にて、皆逃し置き、無人を付込みて家財を盜取るの謀ならん、一里餘もある海邊故、隨て津波の心配有間敷旨申諭せしかば聊安堵の樣子なりしも、引續き時々刻々のゆれにて、中々家に入る事能はず、諸人裏々の明地、又は藪の中に夫れ〳〵露霜を凌ぐのみの藁覆・菰の類にて竹・細木にて結びて小屋を作り、凡十四五日も野宿をなす有樣なりき。又往來の諸家中、並旅人等は其の御出入の本陣或は不難の寺院へ賴み滯留せるもありたり。十一月に至り少しく靜まりたるを幸に家々破損取繕ひ家移りをなしたるもありしが、晝夜逃出す事何度といふ事數ふるに暇なし。同年十二月五日安政と改元仰出され、明れば二年の春を迎へ、安堵の思をなせしが又もや正月二十七日夜八時頃、存外の地震にて、家々殘らず逃出し、俄に戸障子にて露覆をなし、其の夜は野宿せるもの多し。明方迄十二度のゆれあり。難澁其の極に達したり。（藤枝町誌）
出典	日本地震史料
ページ	418
備考	本文欄に[未校訂]が付されているものは、史料集を高精度OCRで等でテキスト化した結果であり、研究者による校訂を経ていないテキストです。信頼性の低い史料や記述が含まれている場合があります。
都道府県	静岡
市区町村	藤枝【参考】歴史的行政区域データセットβ版でみる

版面画像（東京大学地震研究所図書室所蔵）

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