地震史料集テキストデータベース

[未校訂]二日○天明三年七月○中略夕ぐれちかう、ものゝ音いたくひゝきけるに、ふみよみたるもとゝめて人々かうかへ、又かれたちなる神をいへりかといへば、さなん空のけしきどもなし、近きとなうの板しきに、臼やひきてんとてやみね、又とひ來る人のいはく、今の昔聞しが又なりぬ、こはさきつ日より、淺間か嵩いたくやけあかる音なりと、今通りし旅人に聞くなといへり、○中略八日、○天明三年七月夜半より、れいの音ひゞくに起出てその方をのそめは、きのふよりもまさり、はたへの山を超へて、五月斗の雲のいや高ふ涌出るかことく、画かくとも筆の及ふものかはと、人ことにになうめてて見やれと、そのほとりには小石、おほ岩をはるけきみそらにとばし、風につれて四方にふらしむるにうたれ、やはほねものことなうくだかれ、あるは埋れ、にけ出る人いのちうせたるは、いくそはくとも、はかりしらさるなと、よりくる人は、此ことのみそいひあヽる。淺間か嵩の煙は、不二にならびて、いひはやすならひないと、こたひは、文なきためしをいひさはきぬ、ひるつかたよりいよしきさりてなる神のことく、なへのふるかと山谷ひゝきわたり、棚のへいち、小ばち、ゆりおち、かべくづれ、戸ざ〓し、うちはつれ、やもかたふく里もありけるとか、このあたり○洗馬附近はいと高き山里なれは、なりとよむ音も、あときやうなれと、ひきゝ回ほど、わきて音高うひびきたるにや、國々のつかさ／＼より、あゆみとうする馬して、この音はいつこにやと、岐岨の御坂のあたりまて尋ね／＼至り給ふは、日ことに、くしのはをひくよりもしけしとなん、